至上最幸の恋
 でも大丈夫。磯崎さんの優しさに甘えず、私も誠実でいなくちゃ。
 意を決して、真っすぐ前を見た。

「……お付き合いは、できません」

 磯崎さんは、表情を変えなかった。

「磯崎さんのことはとても尊敬していますし、素敵な方だと心から思っています。でもこの街で、ここまでの道のりを振り返って気がつきました。私がここまで歩いてこられた理由。これからも、この道を進んでいきたいと思える理由。その大きな原動力が、なんなのか」

 きっと磯崎さんは、私がなにを言おうとしているのか分かっていらっしゃる。
 それでも、私は自分の言葉で伝える。それが誠意だと思うから。

「瑛士さんを想う気持ち……それはいつでも、私が前に進むためのエネルギーなんです。磯崎さんなら、それでもいいと仰るかもしれない。だけど、その優しさに甘えることはできません」

 誰も傷つけたくない。以前の私なら、そう思っていた。そして当たり障りのない言葉で濁して、答えを先延ばしにしていたかもしれない。

 だけどきっと、どんなふうに伝えても、心に小さな傷は残してしまう。
 それを恐れて本当の心を隠すのは、磯崎さんに対しても失礼なことだと思った。

「うん、分かったよ」

 しばらくして、磯崎さんが静かに頷いた。

「ありがとう、一生懸命考えてくれて」

 いつもの笑顔。やっぱり、とても穏やかで優しい。
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