至上最幸の恋
「ひとつだけ、お願いがあるんだけど」
「はい、なんでしょうか?」

 ティーカップを置いて、磯崎さんは真剣な表情で見つめてきた。

「これからも、カメラマンとして、エリサちゃんを撮り続けていいかな? あと……友人として、変わらず付き合ってくれると嬉しいんだけど」
「そんな。お願いしないといけないのは、こちらのほうですわ」
「ああ、よかった」

 心底安心したように、磯崎さんが胸に手を当てる。

 出会えたことまで、悲しい記憶にはしたくない。磯崎さんがいてくださったから、私は瑛士さんを想い続ける覚悟ができたんだもの。

 尊敬の念と感謝の気持ちは、この先も変わらない。このご縁は、きっと生涯のものなんじゃないかって、ひそかに思っているの。

「実はひとつだけ、ずるいことをしてしまったんだけどね」

 レストランを出ると、磯崎さんがいたずらっぽく笑った。

「ずるいこと?」
「僕はライバルに塩は送らないタイプなんだ」
「え?」
「コレットの慧君にでも聞いてみて」

 お塩って、どういうことかしら。

 磯崎さんはそれ以上なにも言わず、ただ穏やかに笑っている。
 よく分からないけれど……とりあえず、帰国したら慧さんにお尋ねしてみましょう。お土産もお渡ししたいものね。

 大好きなウィーン。今度訪れるときは、どういう私になっているのかしら。

 ほんの少しの切なさと大きな感謝。そして瑛士さんへの強い想いを抱いて、大切な思い出の街をあとにした。
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