至上最幸の恋
「わざわざありがとう。お菓子かな?」
「ええ、ウエハースです」
「妻も喜ぶよ。育児で、かなり疲れているからさ」

 慧さんのお子さまは、そろそろ離乳食が始まるころかしら。まだまだ大変な時期よね。それなら、慧さんも早く帰られたほうがいいんじゃないかしら。

「あの、私はすぐにおいとましますから、早く奥さまのもとへ帰ってさしあげてください」
「あぁ、大丈夫。妻と子どもは、埼玉の実家に帰省中なんだ。俺はひとりで寂しく帰るところだったから、エリサちゃんが来てくれて嬉しいよ」

 明るく言いながら、慧さんがミックスジュースを私の前に置いてくださった。

 一度飲めば、癖になる味。ミカンの風味が際立っていて、それでいて、さまざまな果物の味が絶妙なハーモニーを奏でている。あぁ、いつ飲んでも美味しいわ。

「やっぱり大好きです、このミックスジュース」
「はは、ありがとう。これはカレーと一緒に、両親の代から引き継いでいる味だからね」
「このお店が落ち着くのは、慧さんがご両親の心も受け継いでいるからですね」

 少し照れたように鼻の下をこすって、慧さんが食器を洗いはじめた。

 きっと瑛士さんも、慧さんやご両親のお人柄に惹かれて、このお店に足を運んでいるんじゃないかしら。

 ほんの少しだけ、瑛士さんに会えることを期待していたけれど……そんな偶然なんて、そうそうないわよね。
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