至上最幸の恋
 たとえ日展で特選に選ばれたとしても、世間から見れば、オレはただの配達ドライバーだ。エリサの二足のわらじとは、まったく別物だ。

 すべて中途半端だな。画家としても、ドライバーとしても、夫としても。こんなオレに、エリサの美しさが描けるのだろうか。

「瑛士さん?」

 考え込んでつい無言になってしまったオレの顔を、エリサが心配そうにのぞき込んできた。

「あぁ、悪い。絵の構想をしていた」
「ははは、早く帰って描きたくなったんじゃないのか」

 桂木さんは、妙に嬉しそうだ。
 その言動からは、いつもオレを応援してくれている気持ちが伝わってくる。だからこそ、なんとかして期待に応えたかった。

「今日も、家でずっと描いていたのかな?」
「はい。昨日の夜から、ずっと」
「根詰めすぎてもいけないよ。睡眠と食事は大事だからね」
「今日は妻が出かけているので、つい没頭してしまって……」

 言いながら、はっとした。
 そしてエリサの顔を見ると、やはり驚いて目を見開いている。

「瑛士さん……ご結婚なさったのですか?」
「あ、あぁ。半年前に……」

 どうして、こんなに後ろめたい気持ちになるんだ。
 別に、エリサとは将来を誓い合っていたわけじゃない。ただ旅先で出会って、絵のモデルになってほしいと頼んだだけだ。
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