至上最幸の恋
「これが、私の番号です」

 エリサが、自分の名刺とカタカナが並んだ変換表を取り出した。

「ここに電話をかけて、そのあと番号を入力してメッセージを送信します」
「……11で『あ』、か」
「ええ。ですから、絵が完成したというご報告であれば……」
「14、21……で、濁点が04。21、24、41で、エガカケタ、だな」
「はい、そうです! そのあとに88でスペース、14、12、32で『エイシ』とお名前を入れてくださいね」

 律から覚えるように言われたときは面倒だと思っていたくせに、なにを必死になっているんだか。思わず自嘲してしまう。

 エリサは、いま言った数字を名刺の裏に書き留めてくれた。
 
「またデッサンが必要でしたら、いつでも伺いますわ。遠慮なく、ご連絡くださいね」
「ああ。オレも一応、電話番号を教えておくよ」

 自宅の電話番号をメモに書いて、エリサに手渡す。しっかり連絡先を交換したので、3年前のようにはならないだろう。

 なぜか自分のポケットベルにもメッセージを欲しがる桂木さんの番号も控えたあと、エリサとギャラリーを出た。

「それでは、これで失礼いたします」
「気をつけてな」
「はい。またお会いできるのを、楽しみにしております」

 終始笑顔のまま、エリサが去って行く。
 その後ろ姿が見えなくなるまで眺めたあと、絵の続きを描くため家路についた。
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