至上最幸の恋
「顔を合わせるのは初めてよね? だから先に紹介しておこうと思って。黒瀬君よ」
「黒瀬です。えっと……入社したばかりなので不慣れですが、よろしくお願いします」

 眼鏡の男性が、深々とお辞儀をする。
 黒瀬さんね。まだ若そうだし、私とあまり年齢は違わないのかも。少し控えめな印象だわ。

「エリサ・ラハティと申します。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「はい、えっと。明日は渋谷のスタジオに……何時だっけ……」
「11時でしょ。しっかりしてよ、もう」

 高梨さんに指摘されて、黒瀬さんはしょんぼりしてしまった。

 とても初々しくて、ついつい親近感を覚えてしまう。だけどここで下手に口を開くと余計に高梨さんを怒らせてしまうかもしれないから、黙っておかなくちゃ。

「あの、11時に渋谷のスタジオなので、えと、10時にここへ」
「そうじゃないでしょ! それに早すぎるわよ!」
「あ、あの。私の自宅は青葉台なので、直接スタジオへ向かいますわ」

 やっぱり我慢できずに、口を出してしまった。

「こちらへ寄ってから向かうより、自宅からのほうが早いので……」
「黒瀬君がピックアップするから、自宅にいてちょうだい。いいわね?」
「は、はい!」

 黒瀬さんと一緒に、思わず気をつけの姿勢で返事をした。
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