至上最幸の恋
 それから軽く明日の打ち合わせを済ませたあと、黒瀬さんが自宅まで車で送ってくれることになった。明日迷わないように、予行演習ですって。真面目な方なのね。

「青葉台……って、豪邸が多いところですよね?」

 黒瀬さんが、硬い声で言った。
 私は後部座席に座っているから表情は分からないけれど、もしかして緊張されているのかしら?

「確かに、大きなおうちが多いですね」
「エリサさんって、お嬢様なんですか?」

 お嬢様って、裕福な家庭で育った女性、という意味よね。
 そうですと答えるのも、なんだか変だし。だからといって否定すると、両親に申し訳ない気がするわ。

「えっと……両親のおかげで、不自由のない生活はさせてもらっています」
「やっぱり、そうなんですね。高梨さんから、あまり俗っぽい情報を耳に入れないように、と言われていて」
「え? 俗っぽい?」
「あぁいや、すみません。なんでもないです、はい」

 俗っぽい情報……って、具体的にどういうものかしら。芸能情報とか?

 よく分からないけれど、高梨さんのことだから、きっと私のことを考えてくれているのよね。彼女の言うことは、いつも正論だもの。

 余計なことを言ってしまったと思ったのか、それから自宅に着くまで、黒瀬さんは無言だった。
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