至上最幸の恋
「なんか、すみません……時間管理が下手で」

 運転席に座ったまま、黒瀬さんがうなだれる。

「そんなことありませんわ。遅れてご迷惑をおかけするわけにはいきませんから、早めに着いて安心しました」
「すみません……」
「そうだわ、これをどうぞ」

 なおも謝り続ける黒瀬さんに、クッキーを手渡した。塩バター、抹茶、ココア、アールグレイの4種類を、それぞれ2枚ずつ個包装してラッピングしてみたのだけど……男の方には、少しかわいすぎたかしら。

「クッキーですか」
「はい。昨晩、焼いたものです」
「え、手作りなんですか?」
「ええ。今日お世話になる方たちへ、差し入れです」

 黒瀬さんは、クッキーの包みを凝視したまま固まっている。……もしかして、お菓子はお嫌いだったかしら。

「あの、甘いものが苦手でしたら」
「好きっす。いただきます」
 
 言い終わらないうちに、黒瀬さんがラッピングをほどいて抹茶クッキーを口にする。お腹を空かせていたのか、8枚のクッキーをあっという間に平らげてしまった。

「……あ、すみません。めちゃくちゃ美味しくて、つい一気に食べてしまって」
「うふふ。お腹を空かせていらっしゃるのかと思いました」
「あぁ、いや。朝食は、きちんと食べてきました」

 黒瀬さんが、はにかんだ笑顔を見せる。ようやく緊張がほぐれたみたいね。
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