至上最幸の恋
 もう3年も前のことなのに、まるで昨日のことのように思い出してしまう。とてもとても、幸せな時間だった。

 ココアクッキーをたくさん焼いて、美味しいお紅茶と一緒に楽しむ。瑛士さんとそんな時間を過ごすことを、ずっと夢見ていたのに。

 だけど、もう無理なのね。差し入れをお渡しするだけでも、きっと瑛士さんは困ってしまう。奥様に申し訳ないものね。

 生地を混ぜ合わせながら、涙がこみ上げてくる。
 こら、泣いてはダメよ。我慢しなくちゃ。しょっぱいクッキーになってしまうわ。

 ……そうだわ。塩バタークッキーもいいわね。よし、それもつけ加えましょう。

 こういうときは、お菓子作りに没頭するのが一番。食べてくれる方たちの顔を思い浮かべながら、心を込めて作るの。
 そうすれば、モヤモヤした心が、少しだけ軽くなる。自分のことばかり考えていると、いろいろと落ち込んでしまうのよね。

 黒瀬さんは、甘いものはお好きかしら。苦手だといけないから、お砂糖は少なめにしておいたほうがいいかもしれない。
 そんなことを考えながら、黙々とクッキーを作り続けた。

 そして翌朝。
 黒瀬さんがかなり早めに来てくれたので、撮影スタジオの駐車場で待機することにした。30分前に着くなんて、とても慎重な方なのね。
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