至上最幸の恋
 プライベートな質問をするのは、私のことを知りたいと思ってくださっている証だもの。嫌な気なんて、まったくしないわ。

 もちろん、まだ胸は痛む。瑛士さんへの気持ちを「いい思い出」にするには、きっと長い時間が必要だと思う。
 だけど、現実は現実。私がどれだけ悲しんでも、瑛士さんがご結婚されているという事実は変わらない。それなら、きちんと受け止めないとダメよね。

「黒瀬さん、お気になさらないでください。答えにくいなら、そう言いますし。気分を害したりなんてしませんから」
「すみません。俺、人との距離感を掴むのが苦手で……地元にいたときは、そんなことなかったんですけど。なんか東京って、建前ばかりの人が多いし」

 建前ばかり……確かに、そうかもしれないわね。みんな偽りの心を持っていて、本音とのバランスを保ちながら生きている。そうしないと、潰れてしまうから。

「あ、えっと、そろそろ行きましょうか。いい時間ですし」
「ええ、行きましょう」

 本当は、もう少しお話をしたかったけれど……この短時間で、黒瀬さんの人となりはなんとなく分かった。だから、ここまででよしとしましょう。

 さぁ、お仕事モードに切り替えよ。自分の役割をしっかり果たして、みなさんにご満足いただけるように頑張らなくちゃ。
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