至上最幸の恋
 モデルの仕事を通じて得られるものは、ピアノにも活かせる。その逆も同じ。だからどちらも、いまの私にとっては欠かせないものなの。
 
「ある方に、勧められたんです。ピアニスト兼モデルとしての活動を」
「ある方?」
「ええ。私にとって、大切な方です」

 3年前、悩んでいた私に光をくれた人。周りとの差ばかり感じて劣等感を抱いていたけれど、瑛士さんと出会って、私は私のままでいいと思えたの。

 あのころは、スキルだけでなく表現力でも壁にぶつかっていた。なにを表現できるのか、なにを伝えられるのかが分からなくて。自分に自信がなかった。

 そんな私を「描きたい」と言ってくださった瑛士さん。自然な、ありのままの私を描きたいと。

 だから私は、このままの自分で精一杯の表現をしたいと思った。そのための手段が、ピアノとモデル。瑛士さんのひと言で、自分の道がパッと開けたの。

「大切な方ですか。そういう人がいるのって、いいですね。恋人ですか?」
「残念ながら違います。でも……世界一、大好きな方です」
「……あ、またデリカシーのないことを訊いてしまって、すみません。緊張が解けると、調子に乗りやすくて……」

 黒瀬さんは、しゅんとしてしまった。よく見ると、バーニーズ・マウンテン・ドッグのような、垂れ目で優しいお顔立ちなのね。
< 82 / 84 >

この作品をシェア

pagetop