始まりは一夜の出会いから
 今日の仕事終わり着替えて美月といつもの居酒屋に入って、予約していたのか美月が店に入るなり「花澤です」と店員に告げるとスムーズに案内される。

 個室の方に案内されていると美月はその時に「ごめん、お手洗い行ってくるから先席行ってて」と言われて頷く。

 そのまま何の警戒も無く案内されるがまま着いていったら、その個室の中に新くんが居て「…え!?」と思わず声が出た。

 頬杖を付いてスマートフォンを眺めていた新くんがふとこっちを見て目を見開いていて、私を見るなり頬杖から顔が落ちている。


「…え」

「お飲み物いかがなさいますか?」

「あ、の、他にも連れが居るのですが」

「2名様でと聞いておりましたが…」


 そう言いながら店員が困惑しているのを見て、やられた。ときっと2人共思ったと思う。

 私は美月に嵌められて、この感じ新くんは深瀬さんに連れられたのだと思う。


「…生、でいいです?」

「あ、はい。生で」


 気まずい空気感の中店員に注文を済ませて、新くんの向かいに座る。店員も少し気まずそうにその場から離れて、2人きりの空間になる。


「…深瀬さん?」

「…ですね。変だと思ったんです。聖さんが飲みに誘ってくるなんて。俺となんて飲みに行きたがらないから」

「私じゃなかったらここに来なかった?」

「そんなわけないじゃないですか。でも、こんな居酒屋じゃなくて…、話すならもっと落ち着いたところで、って思ってました。って、なんて意地悪な質問するんですか…」

「私と話したくないかなと思ってたから」


 新くんとそう話すと、どこまでも気まずそうな表情をしている。意地悪な発言をした自覚はある。

 そんな風に無意識に新くんの気持ちを探ってしまったのかもしれない。汚い女だなと我ながら思う。
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