始まりは一夜の出会いから
「…あー、本当に待って。俺まだ有咲さんと話す覚悟決まってない」

「…じゃあ、別日にする?」

「嫌です。帰んないで」


 帰んないで、って言い方ずるい。可愛い。
 思わずきゅんとしてしまって何とも言えない気持ちになる。


「言いたい事はまとまってないですけど、伝えたい事は1つしかないので」


 そう言ったタイミングで店員が中に「失礼します!」と入ってきて生2つとお通しを置いて行く。

 この状況下では全然落ち着いて話せないのに、新くんの伝えたい事がどうしても気になる。

 言葉を待っていると新くんは眉を顰めて首を横に振る。


「…やっぱ家で話しません?邪魔が入るのこりごりなんですけど」

「邪魔って…。店員さんでしょ」

「お節介な人も案外近くで聞いてるかもですね」


 そう言ったタイミングで隣の個室からドンッと大きな音が聞こえて、2人でそちらを見ると新くんは「ほらね」と言って呆れた表情をしている。

 どうして美月達が居るって分かったのか。
 生ビールを飲み干すと「行きましょ」と席を立ち上がる。

 私も慌ててジョッキに入った生ビールを飲み干して、一緒に立ちあがる。
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