始まりは一夜の出会いから
 佐々木さんの隣を歩いて、エレベーターに一緒に乗り込むとそのまま2人きりになる。


「今朝はごめんなさい、出来れば一緒に居たかったんですけど」

「…その話は今やめてください!」


 内緒の話だからか、2人きりなのに耳元で囁く様に言われて耳元を慌てて抑える。そんなことすらも恥ずかしくなって顔が火照る。

 私の反応に少しだけ笑って、私を揶揄う事は止めない。


「どうしてですか?可愛かったのに、昨夜あんなに乱れて」


 会社でそんな事を再度耳元で言われて、身体がビクッと反応してしまう。

 この人の声が好きだからか、息が擽ったいからか、慌てて距離を取る。


「ああ、耳弱かったですよね」


 この人本当に嫌…!

 昨夜の事、私は何も覚えていないのにこの人の記憶には1つ1つ残っていて揶揄う様な笑顔を見せていた。

 そして体が覚えてしまっていて反射的に反応してしまう事も、恥ずかしくてこの場から逃げてしまいたくなる。

 もう少しで営業フロアに着く、耐えろ私、と自分を鼓舞し余裕そうな笑みを零す佐々木さんから目を逸らす。

 この人のペースに飲まれちゃいけない。飲み込まれたら終わりだ。
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