始まりは一夜の出会いから
 そこには驚いた表情をした新くんと深瀬さんが一緒に居た。


「な、にしてんの」

「新、忘れてたの?」

「そんなわけないじゃないですか!有咲が来る日なんて一度も忘れた事なんて…」


 深瀬さんとそんな会話をしながらこちらを見ている。

 その驚いた顔が見たかったのに、今は何だか喜んでくれているかどうかの方が気になってしまって、中々言葉は出ない。

 深瀬さんはふっと笑みを零して「DVDまた今度で良いよ」と新くんの肩をポンポンと叩いて、たった今歩いて来た道の方に踵を返していく。


「え、でも花澤さん」

「そんなのより大事でしょ。久々なんだし」


 深瀬さんが帰って行ったあと、私と新くんの視線が交わる。

 最後に会えたのは半年前でずっと会いたかった。なのに、今は驚いている新くんが何も反応してくれなくて不安で、思い描いていた再会の形とは違っていた。


「…えっと、久し振り?」

「え、本当に、どうしたの?急に来るなんてそんな事無かったじゃん」

「色々、あって」


 私の色々あって、に何を思ったのか「ひとまず入んな」と私のキャリーケースを持ってマンションの中へと招いて行く。

 カードキーでオートロックを解除していて、何だかホテルに来たような感覚だった。

 その後、マンションの階数を押すだけでもカードキーを当てなくちゃいけないし、部屋のドアの所にもかざして、セキュリティーはかなり厳重だった。

 新くんが非常階段の方にもこれ付いててとか、雑談をしながら部屋まで案内してくれたけど、まさかこんなに良い所に住んでいるなんて知らなかった。
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