始まりは一夜の出会いから
「あの、今日は結婚を認めて頂きたく…、ご挨拶にお伺いしました」


 新くんも緊張しているのか「あ、これ、少しばかりの気持ちですが!」とこのタイミングでお土産を渡している。

 それを「あら、ありがとう」と笑って受け取る母と、険しい表情をしている父に、また新くんの表情が少し固まっていく。

 緊張の中挨拶に来てくれたのに父の顔でまた怖気づいてしまっている。

 営業職なのもあって、人の空気感や表情に敏感でそう言うのを察知してしまうのだから、そんな表情はやめてほしい。


「こんな良い人が有咲を貰ってくれるなら、それ以上に嬉しい事なんて無いわよね。お父さん」


 母が空気を和らげるためか、そう言うとお父さんは目頭を押さえて何やら感動している。さっきの表情は涙抑える為だったって事?紛らわしい。

 新くんも多少困惑していて、どういう状況なのか飲み込めていなさそうだ。ツッコミどころ多すぎるでしょう。


「…いつかこんな日が来るって分かっていたけど、寂しいな。良かったな、有咲」

「…うん」


 私は、母と父にこの人が生涯共に過ごしたい人ですなんて紹介できる人が現れるなんて思っていなかった。

 新くんが居なければ、私はあの最低最悪な恋が最後の恋として人生を終了していたのだと思う。

 こんなに幸せな気持ちを埋めてくれたのは、この人だから。
< 122 / 140 >

この作品をシェア

pagetop