始まりは一夜の出会いから
 あれから数週間、よく佐々木さんを社内で見る様になった。

 上で打ち合わせする時もあれば、エントランスで佐原さんと話してるのも見る。

 当然のことかもしれないが仕事はきちんとこなしている様子で、周りからは大好評だった。

 あの人柄ですぐ人と仲良くなって交流を深めているて、尊敬する部分もあった。気付いたらそんな風に無自覚に目で追っている。

 最近その事に気が付いたのは美月に言われた時。


「佐々木さんばっか見てるね、有咲。恋?」


 からかうように指摘してくる美月に慌てて首を横に振る。


「違うから!」

「意地張らないで早く連絡しなよ。佐々木さん優良物件だからすぐ取られちゃうよ」

「私には関係ない」


 遊びで済んで良かったのかも。もう遊び慣れてる人とは付き合いたくない。どうせ私だけを見てくれるなんて奇跡は無いのだから。

 男の人を意識すると、思い出すのは高校時代の元彼の事。

 凄く好きだったからこそ、トラウマだった。
 もう付き合うとか、そういうことで傷付きたくない。

 それに佐々木さんには、私みたいな面倒な女は似合わない。

 身体を重ねて好きかも?と勘違いして気になっていただけだ。恋愛経験が浅いからそんな勘違いする事になる。

 そんな風に考えながらも仕事に集中し始めると、目の前に影が出来て恐る恐る顔を上げる。


「こんにちは!有咲さん!」


 その笑顔が少しだけ黒い気がするのは気の所為?


「何か御用ですか?」

「どうして連絡くれないんですか、こんなに待ってるのに」


 座っている私と目線を合わせる様に、屈んでいた。
 真っ直ぐな目で見られて、思わず顔を逸らす。
< 13 / 140 >

この作品をシェア

pagetop