始まりは一夜の出会いから
 その顔の良さもあって、見つめ合うのは無理だ。

 そのまま見つめ合ってしまえば簡単に理性など失くして、好きになってしまいそうな気がした。

 ここがゲームの世界なら簡単に恋に落ちていけるのに、残念ながらここは現実である。


「あー、そんな世界無いかあ」


 顔を覆いながら言うと、佐々木さんは首を傾げている。

 私の隣で「 気にしないで、これ発作だから」と説明している美月。


「へー、発作?」

「佐々木さんの顔が良すぎて悶えてるんだよきっと」

「余計な事言わないでよね!」


 美月に怒ると、1つ咳払いをする。

 落ち着かせて、恐る恐る佐々木さんに目を合わせると、ニコッと微笑んでくれる。

 そんな表情にもうっかりやられそうになる。


「ね、ご飯行きましょうよ、有咲さん」


 そうにこやかに笑顔を向けながら食事に誘ってくるイケメン。

 こんなの何かの気の迷いに決まっている。

 誰がこんな不愛想でぱっとしない女を、こんなイケメンが食事に誘ってくるものか。


「美月、通訳」

「佐々木さんに捕まったら、逃げれないから行ってきな」


 私の味方じゃなかった…。そもそも私のタイプの男がいるって釣ってきた時点で味方じゃないよなあと頭を抱える。


「土曜日、デートどうですか?」


 行かないとずっとお誘いしてきそう。それなら1度出かけるくらい⋯、と考えて私は「…はい」と渋々頷く。

 そんな私の心の内も知らずにぱっと弾ける様な笑顔を見せてくる佐々木さんに、眩しくて思わず撃ち抜かれた様な気がした。

 こんなに明るい笑顔をここ最近で見たことがない。


「言質取れた!ちゃんと連絡くださいね。くれなかったら花澤さんから貰っちゃいますんで」


 そう言うと立ち上がって、その場から離れていく。

 なんか脅された気もするけど気の所為?
 土曜日…って事は、休みの日って事だよね。

 なんて考えていると、ある事実に思い出してどんどん血の気が引いていく。
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