始まりは一夜の出会いから
 その日、新くんはいつも通り帰ってきたけれど、相変わらず少し気まずそうでいつも通り「ただいま」と挨拶はするけど、いつも通りのあの人懐っこさはない。


「おかえり」


 そんな気まずそうな新くんとは対照的に私はいつも通り明るく返事をする。

 私の態度に驚いた表情をしていたけれど、何事も無かったように「もう少しでご飯できるから待っててね」と声を掛けると、うんと返事しながらも少し困惑している様子だった。





☁︎ 𓂃𓈒𓏸





 ダイニングテーブルで2人向かい合ってご飯を食べると、テレビを見ている新くんに「先日の話だけど」と声を掛けると一気に咳き込んでいた。

 その話をこのタイミングで振られないと油断していたのだと思うけど、確実に逃げられないタイミングを計ってわざと夕食時に声を掛けた。


「大丈夫?」


 そう言いながらグラスに入ったお茶を差し出すと新くんは受け取って一気に喉に流し込む。


「このタイミング…だと思ってなかった…」

「別に諦めたわけじゃないし、新くんいつもうまい事話回避するから」

「…ぐうの音も出ない」


 案の定うまく逃げる気だったのか、新くんはそう言葉にして手を膝元に置いている。

 まるで今から怒られる子供の様な態度をしていて少し可愛く見えてしまう。

 この態度過去にも似たような状況で見たことある気がして、少し懐かしくも感じた。


「…私、ちゃんと新くんの事も見て子供欲しいって話してるからね」

「え?」

「子供を大事にできない人はそもそも人の事も大事にできないから。でも、その点私は新くんに大事にされているなと思うし、うちの両親にも大事にしてくれているの知ってる。そんな新くんだから子供欲しいって思ってるんだよ」


 そう言葉にすると、少し驚いた顔をした後、私の言葉を脳内で考えているのか、中々返事は来ない。
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