始まりは一夜の出会いから
「いえ、やっぱり1人で片付けてきます。私の問題ですので。お気持ちは嬉しいです、ありがとうございます」

「絶対そう言うんだろうなって分かってましたけど…。行かせたくないな…」

「そう言われると甘えちゃうので」


 笑ってお断りすると佐々木さんは頬杖を付いて少し微笑んで、私の髪を軽く掬う。


「甘やかしたいんですよ。もう十分傷付いてきたし、頑張ってきたから。今度は何があっても離れずに傍に居たいんです」


 佐々木さんの発言に照れて、頬が火照ていく。

 こんな風に言ってくれる人いままでいなかったし、甘やかしたいだなんて。

 それに、今度はって…、何の話?


「俺、出来た人間じゃないので有咲さんが弱っているの見ると漬け込めないかなって常に考えちゃうんですよ。だから、溶けるまで甘やかしたいし、そのまま俺に落ちてきてくれないかなって」

「あ、あの、困ります…!」


 恥ずかしくなって少し体を後ろに引くと楽しそうに笑っている佐々木さんが目に入る。

 もう好きになりかけているのに、そんな事言われたら余計に考えちゃうから。


「強がりで頑張り屋な有咲さん好きですけど、たまには甘えてください。頼る所があった方が、少しは安心できますし」

「…はい、ありがとうございます」


 今の私の事を否定せずに言い方を考えて伝えてくれる所本当に素敵だし、好きだ。

 私の中で決着が付けば、今度はこの人にちゃんと向き合いたい。

 一夜の過ちから始まる恋なんて絶対無しだと思っていたのに、いつしかそんな考えも薄れていた。
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