始まりは一夜の出会いから
 そして部屋に入るなり、新くんは落ち着かない様子でコーヒーをテーブルに置く。

 私の隣に座ると、ずっとそわそわしていて、それに耐えられなくなったのかテーブルの上のリモコンを手に取ってテレビを点ける。

 その時やっていた番組がバラエティー系の番組で『100人の10代から40代の女性に聞きました!彼氏や夫と別れたくなるのはどんな瞬間~!?』と声が聞こえてきて、新くんがそれを慌てて消している。このタイミングでその話題は、心臓に悪すぎる。

 それから少し諦めた様な表情をしてソファーの背凭れに背を深く預けている。


「お話があります」


 私の言葉にですよねと言った感じで「はい」と返事をするも、あまり聞きたくはない様で、態度はこれから怒られるのを覚悟している子供の様な態度をしている。


「私、別れないからね」

「え?」


 何故か驚いている新くんに、少しだけ笑いかける。

 その様子だと別れ話だと思っていたのだろうけど、そんな簡単には離れてあげない。

 これからどんどん私を好きになって、それでも手に入れられないもどかしさを味わえばいいのにとすら思っている。


「私が結婚とかの話をしたのは新くんだから。でも、私は元々新くんがいなきゃ結婚してない人間だし、新くんが結婚したくはないけど、それでも近くに居てくれるって約束をしてくれるなら受け入れるつもりだよ」

「え…、でも自分の子供とか欲しいってなったら…」

「うーん、その時は結婚せずに子供だけ産む?」

「そんな無責任な事出来る訳…!有咲さんたまにぶっ飛んでます!」

「流石に冗談だけど、でも、私が将来を考えたいのも全部全部新くん以外は嫌な事覚えてて。新くんじゃないなら、どれもしたくない」


 そう言って新くんの少し震えていた手を取った。
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