始まりは一夜の出会いから
「そういえばさ、有咲はどうするつもりなの?転勤の話」

「転勤?」


 何の話か分からないワードに思わず聞き返してしまう。

 私達の会社で営業ならともかくとして、受付に転勤など異例も異例すぎる。

 確かにうちは支社で本社は別にあるし、支社がいくつかある大きな会社だとしても、受付で転勤はないし聞いたことすらない。

 そんな私の様子に美月は眉を顰めていた。


「…嘘でしょ、何も聞いてないの?」

「どういう事?何で私達の間で転勤の話が出るの」


 私の問い掛けに美月はしまった、と言う表情を明らかにしていた。これだけの会話で嫌な胸騒ぎがしてしまうの何でなんだろう。

 新くんの様子の違和感、私と美月の中で転勤と言うワードが出た事、美月の表情、全部が一気に繋がってしまった気がした。本人の口から真実を聞く前に。


「…美月、新くんの事、何か知ってるの?」

「ごめん、私、聞いてたと思って…、忘れて」

「忘れてって何!?聞いてたって!?」


 ここまで来て聞かなかったふりになんて出来ない。

 どうして私が知らなくて美月が、新くんの話を知っているの?どうして新くんは私には何も話してくれないの?

 どうして、どうして、ってそんな疑問が止まらなくて詰めても仕方ない美月に強く詰め寄ってしまう。


「…詳しい話は本人から落ち着いて聞いてね」


 どうして、私は先に新くんからこの話を聞けなかったのだろう。
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