始まりは一夜の出会いから
 あれからしばらく経っても、新くんと連絡は取り合っていなかった。

 私も連絡していないし、新くんから連絡も来ていない。

 一緒には居られないという言葉を別れ言葉として受け入れられてしまったのかもしれない。

 もう、修復不可能?


「有咲、私報告があって」


 美月と一緒にランチをしていたのだけど、その美月が改まって話をしてきている。


「うん?」

「私も聖に着いて行くことにした」

「あ…、そうなんだ」


 喜ばしい事のはずなのに、そうなんだ、しか出てこなかった。

 新くんも離れて、美月も遠くに行っちゃうんだな。なんて、今はそんな風にしか考えられなくて、笑顔で送り出せる自信が無かった。


「…寂しい、離れちゃうの」

「やだなあ、有咲だから安心して離れられるんだよ!どこに居ても私たちの友情はずっと保てるでしょ!」


 そう言って笑ってくれる美月に少し泣きそうになってしまう。

 大学時代からずっと一緒に居たから寂しいに決まっている。それでも有咲だからって言ってくれた言葉も嬉しくて、感極まっていると美月が少し泣きそうになりながらも笑いかけてくれる。


「言っておくけど、私もすっごい寂しいからね!でも…、聖にどこまでも着いて行きたいって思ったから、傍に居る事選んだ」


 着いていく、って選択肢、私にはまだなかった。

 何だかんだ今の新卒から働いている会社の環境を気に入ってしまっていたのもあったし、中々踏ん切りがすぐには付かない。

 だからこそ新くんはどう考えているのか、そういうことも話したいのに、なかなか気持ちの整理もつかない。
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