転生脇役令嬢は原作にあらがえない
 涙をためた目を見られるのが嫌だったが、ポーラはやがておずおずとクレイヴを見上げて、彼の服をつん、とつまんだ。

「一番綺麗な状態で、あなたのお嫁さんになりたいの……だめ?」

「……っ」

 口を押えて、クレイヴは言葉に詰まる。たっぷり数十秒沈黙するクレイヴを、ポーラは心配そうな目で見上げていたが、その視線を受けたクレイヴはやがて深い深いため息を吐いた。

「仕方がありませんね……」

 延期しましょう、と告げた彼の耳が少し赤くなっていたのに、ポーラは気付かなかった。ただ、式が延期され、万全の状態で嫁げるという事実を無邪気に喜んだのだった。
< 11 / 50 >

この作品をシェア

pagetop