転生脇役令嬢は原作にあらがえない
転生脇役令嬢は原作の始まりを知る
原作のクレイヴには、婚約者はいなかった。だから、わたくしはもう原作から外れた未来を歩き始めたと勘違いしていたの。
原作が始まってしまったと気付いたのは、わたくしがクレイヴと再会した一カ月後のことだった。
クレイヴは伯爵として忙しくしているから、毎日は会えない。けれどその日は、わたくしに会いに来てくれていた。彼が執事だった頃なら、わたくしの部屋で一緒にお茶をしたのだけれど、彼とはもう正式な婚約者同士。密室にふたりきりでこもるのは良くないからと、応接室でクレイヴを迎えたわ。
「お嬢様、次の夜会のパートナーとして参加していただきたいのですが、よろしいですか?」
「夜会?」
わたくしが首を傾げると、クレイヴは微笑んで頷いた。
「はい。私はこれまで夜会に参加する際は、パートナーを伴わずに参加していましたが、正式に婚約者として、あなたをお披露目したいのです。……いいですか?」
ブルーサファイアの瞳が、わたくしを見つめるせいで、胸がきゅうっとなる。頬が赤くなってしまったのがクレイヴにはバレてしまったかしら。心配になりながらわたくしは、小さく頷く。
「ありがとうございます。とは言っても、主催ではないので、あなたを夜会の主役にすることはできませんが……」
それでもあなたを早く紹介したくて、というクレイヴの言葉に、わたくしの頬はいよいよ熱くなる。それを誤魔化すために、わたくしは話を促した。
「今度の夜会はどちらの家が主催なの?」
「アーチボルト家です」
「……え?」
その名前に、わたくしの心臓が、違う意味でどくん、と鳴った。嬉しさと恥ずかしさで火照っていた頬が、急速に熱を失うのを感じる。
「療養のために王都を離れていたアーチボルト家のご令嬢が、十年ぶりに戻られたというニュースはご存知でしょう?」
「……いいえ、知らなかったわ。そういう情報に、わたくしはうとくて……」
震える声をなんとか抑えて、わたくしは答える。
「次の夜会はそのロッティ・アーチボルト嬢のデビュタントなんです」
原作が始まってしまったと気付いたのは、わたくしがクレイヴと再会した一カ月後のことだった。
クレイヴは伯爵として忙しくしているから、毎日は会えない。けれどその日は、わたくしに会いに来てくれていた。彼が執事だった頃なら、わたくしの部屋で一緒にお茶をしたのだけれど、彼とはもう正式な婚約者同士。密室にふたりきりでこもるのは良くないからと、応接室でクレイヴを迎えたわ。
「お嬢様、次の夜会のパートナーとして参加していただきたいのですが、よろしいですか?」
「夜会?」
わたくしが首を傾げると、クレイヴは微笑んで頷いた。
「はい。私はこれまで夜会に参加する際は、パートナーを伴わずに参加していましたが、正式に婚約者として、あなたをお披露目したいのです。……いいですか?」
ブルーサファイアの瞳が、わたくしを見つめるせいで、胸がきゅうっとなる。頬が赤くなってしまったのがクレイヴにはバレてしまったかしら。心配になりながらわたくしは、小さく頷く。
「ありがとうございます。とは言っても、主催ではないので、あなたを夜会の主役にすることはできませんが……」
それでもあなたを早く紹介したくて、というクレイヴの言葉に、わたくしの頬はいよいよ熱くなる。それを誤魔化すために、わたくしは話を促した。
「今度の夜会はどちらの家が主催なの?」
「アーチボルト家です」
「……え?」
その名前に、わたくしの心臓が、違う意味でどくん、と鳴った。嬉しさと恥ずかしさで火照っていた頬が、急速に熱を失うのを感じる。
「療養のために王都を離れていたアーチボルト家のご令嬢が、十年ぶりに戻られたというニュースはご存知でしょう?」
「……いいえ、知らなかったわ。そういう情報に、わたくしはうとくて……」
震える声をなんとか抑えて、わたくしは答える。
「次の夜会はそのロッティ・アーチボルト嬢のデビュタントなんです」