転生脇役令嬢は原作にあらがえない
 本来、喜ばしいできごとであるはずのその夜会を、わたくしは喜べない。だって、ロッティ・アーチボルト。彼女は、『堕ちゆく花たち』のヒロインなのだから。


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 『堕ちゆく花たち』の物語は、幼いころから病弱だったために辺境の領地で療養していた侯爵令嬢ロッティ・アーチボルトが、王都に戻ってくる所から始まる。つまり、既に原作ストーリーは始まっていたの。

 もちろん、彼女が王都に戻ったからと言って、この先の未来が原作通りに進むとは限らない。現に、原作の中ではクレイヴには婚約者はいなかったけれど、今の彼にはわたくしという婚約者がいる。さらに言えば、原作では子爵位を継いだばかりだったクレイヴは、伯爵位を得ているのだから、原作とは大きく状況が違うわ。それでもわたくしが気がかりで仕方ないのはロッティ・アーチボルトのデビュタントは物語の序盤でもわたくしにとって大きな意味を持っているから。

 彼女のデビュタントは、序盤でクレイヴが初登場する場面であり、ロッティとクレイヴの出会いの場なのよ。クレイヴが正式に夜会に招待されている以上、きっと彼女との出会いは避けられない。そして、出会ってしまえば、原作通りならクレイヴは彼女を好きになってしまう。

 本当は夜会なんて欠席したかった。原作のとおりに物語が進行するのを見たくなかったから。でも、わたくしが参加しなければそれこそ原作通りになってしまうかもしれないわ。クレイヴに夜会への参加をやめてもらうことも考えたけれど、伯爵になったばかりの彼の立場を考えれば、侯爵家からの招待を断るなんて、百害あって一利もないもの。これがただの物語やゲームであれば、無理な行動をとったとしても後のことなんてどうでもいいけれど、この世界は現実。だから、わたくしが嫌だからと言ってクレイヴの立場を悪くするわけにはいかないわ。

 だからわたくしは、クレイヴが参加するというロッティ・アーチボルトのデビュタントに出席するしかなかったのよ。

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