転生脇役令嬢は原作にあらがえない
アーチボルト侯爵家のパーティーホールは、どこもかしこも磨き上げられていて、美しい生花があちらこちらに飾られている。あの花が咲く季節は冬のはずだから、きっと魔法使いにお金をたくさん積んで用意したのでしょう。立食形式で用意された食事の数々や、招かれている人たちの数、配置された使用人の多さからして、この夜会はきっととてもお金がかかったでしょうね。けれど、そんな大金をかけても惜しくないと思えるほど、ロッティ・アーチボルトのことをアーチボルト家当主が大事にしているということだわ。
「お嬢様、もしかして体調が優れませんか?」
会場に入ってから黙っていたわたくしの顔を、クレイヴが覗き込んできた。わたくしったら、クレイヴに心配をかけてしまったのね。よくないわ。
「ううん、あまり夜会に出ることがないから、少し緊張していただけよ。大丈夫」
「なら良いのですが……何かあればすぐに私に教えてくださいね。社交よりもお嬢様の方が大事ですから」
「わ、わかったわ」
真剣なクレイヴの顔に、頬が熱くなってしまう。クレイヴは優しすぎるのよ。いつもわたくしのことを気遣って……もしかしてこれは、わたくしがそうさせているのかしら。原作では『ポーラお嬢様』は、回想にしか出てこなかったのに、原作のクレイヴはそばにいないはずのポーラお嬢様の顔色をうかがって怯えていたもの。
原作のクレイヴと、わたくしの傍にいるクレイヴは違う。それは判っているのに、原作とリンクする部分があると、どうしても不安になってしまうのだわ。
しばらくして、使用人の一人がベルをりりん、と鳴らした。その音に振り返れば、使用人のすぐ傍に少女をエスコートした銀髪の男性がいる。少女の髪は男性と同様、明るい銀髪で、豪奢なドレスを身にまとっている。遠巻きだからここから彼女の瞳の色は判らないけれど、きっと瞳の色はスカイブルーね。
「お集まりの皆さま、ご注目ください」
使用人が声を張り上げると、男性が頷いて少女と共に一歩前に出た。
「諸君、今夜は娘のために集まってくれたことを嬉しく思う。存分に夜を楽しんでくれたまえ」
「お嬢様、もしかして体調が優れませんか?」
会場に入ってから黙っていたわたくしの顔を、クレイヴが覗き込んできた。わたくしったら、クレイヴに心配をかけてしまったのね。よくないわ。
「ううん、あまり夜会に出ることがないから、少し緊張していただけよ。大丈夫」
「なら良いのですが……何かあればすぐに私に教えてくださいね。社交よりもお嬢様の方が大事ですから」
「わ、わかったわ」
真剣なクレイヴの顔に、頬が熱くなってしまう。クレイヴは優しすぎるのよ。いつもわたくしのことを気遣って……もしかしてこれは、わたくしがそうさせているのかしら。原作では『ポーラお嬢様』は、回想にしか出てこなかったのに、原作のクレイヴはそばにいないはずのポーラお嬢様の顔色をうかがって怯えていたもの。
原作のクレイヴと、わたくしの傍にいるクレイヴは違う。それは判っているのに、原作とリンクする部分があると、どうしても不安になってしまうのだわ。
しばらくして、使用人の一人がベルをりりん、と鳴らした。その音に振り返れば、使用人のすぐ傍に少女をエスコートした銀髪の男性がいる。少女の髪は男性と同様、明るい銀髪で、豪奢なドレスを身にまとっている。遠巻きだからここから彼女の瞳の色は判らないけれど、きっと瞳の色はスカイブルーね。
「お集まりの皆さま、ご注目ください」
使用人が声を張り上げると、男性が頷いて少女と共に一歩前に出た。
「諸君、今夜は娘のために集まってくれたことを嬉しく思う。存分に夜を楽しんでくれたまえ」