転生脇役令嬢は原作にあらがえない
はちみつ色の髪が日差しを受けて透けていて綺麗で、まずそこに目を奪われた。わたくしと目を合わせようとしない伏し目がちの目にも同じはちみつ色のまつげがあって、まつげに隠れて瞳の色がよく見えなかったけれど、不安そうに揺れているのは判ったわ。今考えれば無理もないことよね。それまで住み慣れた家を離れて、いきなり使用人として暮らせだなんて、同じ立場だったらきっとわたくしも不安になったわ。クレイヴはわたくしの二歳上だから、この時のクレイヴは七歳だったの。
「誰?」
わたくしが当然の疑問を投げかけると、彼はわたくしに目を合わせないまま、お辞儀をした。
「クレイヴです。今日から、ポーラお嬢様の執事見習いとして、こちらでお世話になります」
「そうなの?」
クレイヴを連れてきた家令に目を向けると、家令は頷いた。
「ずっとお嬢様のお傍に仕えさせます」
「まあ! ならずっと、ずっと一緒なのね。嬉しいわ! 仲良くしてくれるかしら。よろしくね、クレイヴ!」
その時のわたくしは純粋に嬉しくてそう言ったの。だって、その時のわたくしにはきょうだいもお友達もいなくて、周りは大人ばかりで、気の許せる近しい人がいなかったから。年がほとんど変わらないクレイヴが一緒に居てくれると聞いて、とても嬉しかったのよ。
わたくしの言葉を聞いた彼はぴくりと震えてから、ゆっくりとこちらに目を向けた。伏し目がちだった目がしっかりと開いて、わたくしの目を見たのよ。その目は、ブルーサファイアよりも澄んだ青色で、きらきらの宝石みたいだったの。
あんまりにも綺麗で、わたくし頬が熱くなってしまったわ。
でも同時に、わたくしの脳裏には、とあるシーンがフラッシュバックしたの。それは、文字でしか追ったことのなかった台詞と全く同じだった。
「……精一杯、務めさせていただきますお嬢様」
もう一度お辞儀をして、顔をあげたクレイヴは微笑んでいた。はちみつ色の髪にブルーサファイアのように澄んだ青の瞳。そして、『ポーラお嬢様の執事』。