転生脇役令嬢は原作にあらがえない
首を振って、クレイヴは続ける。
「私は婚約者のいる身です。親しくするとしても、異性間では節度が必要でしょう。どうかこのまま、アーチボルト嬢と呼ばせてください」
クレイヴがそう断ったのに対して、ロッティ・アーチボルト嬢ははっと息を呑んで口を押さえる。その顔がみるみるうちに赤くなっていった。
「いやだ、わたくしったら……さっき配慮が足りなかったばかりなのに、また同じことを……! ごめんなさい、ポーラ。気を悪くしたわよね」
「あ、あの」
「ううん、言わなくてよろしいのよ。本当にごめんなさいね。クレイヴ様も……いいえ、フローリー伯爵様もごめんなさい。わたくし、淑女としてあるまじき振舞いでしたわ」
恥じ入るようにそう言ってから息を吐くと、ロッティ・アーチボルト嬢は美しいカーテシーをする。
「お友達になりたいのは本音でしたが、フローリー伯爵様には失礼いたしました。ポーラ、お友達の申し込みはまた改めてさせてちょうだい。今夜はこれ以上合わせる顔がないわ。失礼いたしますね」
そう言って、踵を返すと、ロッティ・アーチボルト嬢は去って行った。その後ろ姿になんと声をかけようか迷っているうちに、彼女は廊下を曲がって姿が見えなくなってしまう。
流れていた涙もいつの間にか乾いてしまっていたわたくしは、ほっと息を吐いた。そんなわたくしを見てクレイヴも深く息を吐く。
「……何と言うべきか、嵐のような方でしたね」
『嵐のような人』という評価は、小説通りだわ。けれど、小説の中のクレイヴは陶然としていたのに対して、今のクレイヴはどうしてか困惑したような表情で苦笑している。
「……もしかして、苦手?」
「このような言い方はどうかと思いますが……婚約者がいると判っている異性に対して、親しく友達になりましょう、という女性はあまり……お近づきになりたくありませんね」
苦々しい感情を隠しきれない様子でクレイヴが言う。
「ふふ」
「どうかなさいましたか?」
わたくしがつい漏らした笑い声に、きょとんとしたようなクレイヴが首を傾げた。
「ううん、少し、安心してしまったの」
「私は婚約者のいる身です。親しくするとしても、異性間では節度が必要でしょう。どうかこのまま、アーチボルト嬢と呼ばせてください」
クレイヴがそう断ったのに対して、ロッティ・アーチボルト嬢ははっと息を呑んで口を押さえる。その顔がみるみるうちに赤くなっていった。
「いやだ、わたくしったら……さっき配慮が足りなかったばかりなのに、また同じことを……! ごめんなさい、ポーラ。気を悪くしたわよね」
「あ、あの」
「ううん、言わなくてよろしいのよ。本当にごめんなさいね。クレイヴ様も……いいえ、フローリー伯爵様もごめんなさい。わたくし、淑女としてあるまじき振舞いでしたわ」
恥じ入るようにそう言ってから息を吐くと、ロッティ・アーチボルト嬢は美しいカーテシーをする。
「お友達になりたいのは本音でしたが、フローリー伯爵様には失礼いたしました。ポーラ、お友達の申し込みはまた改めてさせてちょうだい。今夜はこれ以上合わせる顔がないわ。失礼いたしますね」
そう言って、踵を返すと、ロッティ・アーチボルト嬢は去って行った。その後ろ姿になんと声をかけようか迷っているうちに、彼女は廊下を曲がって姿が見えなくなってしまう。
流れていた涙もいつの間にか乾いてしまっていたわたくしは、ほっと息を吐いた。そんなわたくしを見てクレイヴも深く息を吐く。
「……何と言うべきか、嵐のような方でしたね」
『嵐のような人』という評価は、小説通りだわ。けれど、小説の中のクレイヴは陶然としていたのに対して、今のクレイヴはどうしてか困惑したような表情で苦笑している。
「……もしかして、苦手?」
「このような言い方はどうかと思いますが……婚約者がいると判っている異性に対して、親しく友達になりましょう、という女性はあまり……お近づきになりたくありませんね」
苦々しい感情を隠しきれない様子でクレイヴが言う。
「ふふ」
「どうかなさいましたか?」
わたくしがつい漏らした笑い声に、きょとんとしたようなクレイヴが首を傾げた。
「ううん、少し、安心してしまったの」