転生脇役令嬢は原作にあらがえない
 クレイヴが破滅を迎える展開になった頃、ロッティが求婚を受けた末にそのような騒動になったことを知った王太子は、これ以上身分を隠してロッティと交流を続けるのは無理だと悟った。そして彼は身分を明かし、正式に彼女への求婚をする。王太子と明かす前の告白についての返事はまだだったが、王族からの求婚など断れるはずもない。侯爵家はすぐに婚約同意の旨を返し、ロッティと王太子は正式に婚約する運びとなった。

 しかし、ここで暴れたのがロッティの従兄である。彼がアーチボルト家への居候を許されていたのは、もともと一人娘しかいないアーチボルト家の婿養子に入る予定があったからだ。婚約も取り交わしておらず、ロッティも預かり知らぬところではあったが、少なくとも従兄はそのつもりだった。ゆくゆくはロッティは自分と結婚するのだと心の底では思っていた従兄にとって、ロッティと王太子の婚約は、青天の霹靂の事態である。

「ロッテ、俺と結婚するんじゃなかったのか?」

「……お兄さま、どうしてそんなことをおっしゃるの?」

 きょとんとした彼女は、本当に思い当たるふしがないようだ。まるで彼がロッティに寄せる想い全てがただの親族としての親愛で、恋愛感情など全くなかったかのような反応だ。二人は、クレイヴや王太子と比べて、ずっと親密だったはずだ。ロッティが家族以外で頬へのキスを許していたのは従兄だけだったし、外で彼女をエスコートするのはいつも従兄の役目だった。

 当然、ロッティだって従兄のことを憎からず思っていると思っていたのに「好き」だという言葉を使わなかっただけで、純真なロッティは従兄の気持ちに一切気付いていなかったのである。

「わたくしは、王太子殿下と婚約いたしましたわ。お祝いしてくださらないの……?」

 傷ついた表情で涙を浮かべたロッティに対して従兄は動揺したが、彼は今まで他の二人の男とのアプローチ合戦によって、狂ってしまっている。

「判った」

「お兄さま!」

「お前が俺のものにならないなら、殺してやる」

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