転生脇役令嬢は原作にあらがえない
 涙を流しながら従兄は毒を口に含むと、無理やりロッティの唇を奪ってその毒を彼女に流しこんだ。

「いや……やめ、て……!」

 自身も毒に苦しみながら、最期にロッティを汚してやろうと、従兄はロッティの服を乱暴に剥く。けれど、ロッティの必死の抵抗により、従兄の凶行が完遂する前に従兄は昏倒した。

 口移しで飲ませたために、毒のもっとも強力な成分は従兄が吸収し、ロッティは弱まった毒を飲んだ。結果として従兄はそのまま死んだが、ロッティは何とか命を繋ぐことができたのだった。

 この事態に狂ったのは、王太子である。弱々しい姿でベッドに伏せるロッティの姿に、王太子はかつての初恋の人の姿を重ねてしまった。

「どうして私の愛する人は、私を置いていこうとするんだ……」

「わたくしはずっと王太子殿下のおそばにおります」

「今にも貴女の命の灯は消えてしまいそうじゃないか!」

 そう叫んだ王太子に対して、ロッティは首を振る。

「そんなに心配なさらないで。わたくしはすぐ元気になりますわ」

「……すぐに元気になったとしても、貴女を私から攫おうとする輩はこれからも現れるんだろうな。貴女は、男に愛想を振りまきすぎる」

 ふ、と鼻で笑った王太子を見たロッティは目をみはったが、すぐに微笑みを浮かべた。

「でしたら、わたくしの命をその手でつみとってください」

「なに……」

「殿下、わたくしと共に死へ旅立ちましょう? そうすれば誰に奪われることもなく、わたくしと殿下は永遠に一緒です」

 彼女の浮かべる微笑みはほの暗い。それも無理のないことだった。ロッティは三人の男性にとりあわれ、そのうちの一人には愛を語ったその場で彼女を誘拐しようとし、信頼していた従兄には毒殺されそうになった上に辱めを受けるところだった。その上、婚約者にまで今後の浮気を疑われている。そんな状況で正気でいられるわけがなく、王都に戻ってきたばかりの頃のような純真だったロッティはもういなかった。

「もう、わたくし疲れました」

 どうせ王太子はこの申し出を受け入れる訳がないと思いながら、ロッティはそう呟く。

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