転生脇役令嬢は原作にあらがえない
 正直に言って、友達になった彼女はとても可愛かった。原作と同様、王都に来たばかりの彼女は天真爛漫そのもので、たまに不躾なところがあるものの、指摘すればその生来の素直さですぐに改めてくれる。彼女の住んでいた領地では同年代の知り合いがほとんどおらず、知り合いたちはロッテに対して注意らしい注意をしてくれないので、わたくしのようにちゃんと注意をしてくれるお友達というのが、とても新鮮で、そして嬉しいのだと彼女は言っていた。

 ……わたくし、こんな素直な彼女の未来の婚約者との出会いを潰そうとしているのよね。胸が痛いわ……。

「あら? あれは何かしら?」

 何かに気付いたロッテが、遠くの方を指さした。そこには、礼服に身を包んだ騎士たちが整然と列を成して行進してきていてる。

「ああ、今日でしたか」

「クレイヴ、知っているの?」

「見ていればわかりますよ」

 にこりと笑んだ彼に、わたくしは首を傾げる。

 花まつりに騎士たちが出てくるイベントなんてなかったはずだわ。それに、こんな騎士たちの行進があったら、原作にだって書かれていたはずなのに、全く思い出せない。何があったのかしら……。

 騎士の皆さまがたは、庭園の中央広場にまで行進すると、道の中央をあけるように整列し、先頭の方がラッパを鳴らした。それに合わせて、騎士たちが一斉に敬礼する。わたくしたちを含めた庭園の来場者は、何ごとかと皆足を止めてその光景を見守り始めた。

 そうしてできた騎士が囲んだ道を、一台の馬車が進んでくる。乗っている人を披露するためのオープンタイプの馬車は、季節外れの花を含めたとりどりの花で美しく飾り上げられていて、それに乗っている人もまた、髪に花を挿した女性と、男性の二人組だった。馬車とわたくしたちはずいぶんと離れていて顔はよく見えないけれど、輝かんばかりの美しい髪色は、遠目にもわかる。

 女性は銀髪、そして男性の方は眩しいほどの金色の髪。月と太陽のようなこの取り合わせは、原作のとあるシーンを思い起こさせて、ちらりと隣に立っているロッテを盗み見た。彼女の髪の色も、銀色なのだわ。

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