転生脇役令嬢は原作にあらがえない
 原作の後半、王太子殿下とロッテが王城前の大通りを馬車に乗って現れ、婚約発表をしたシーンよ。その時の二人は、『新たに婚約者として結ばれる二人は太陽と月のように美しかった』と表現されていたわ。

 今は原作ではまだ出会いのシーンだし、婚約のシーンが描かれた季節は冬だったのだから、全然違う。けれど、尊顔を拝見したことなくても、あそこにいらっしゃるのは王太子殿下だというのはわかるわ。あまりにも原作リンクしたかのような場面に、わたくしの胸が緊張でどきどきとしてきた。

 園庭の中央に到着した馬車は停車し、後ろに付き従っていた恰幅のよい男性が前に進み出る。それに合わせて、馬車に座っていた二人が立ち上がった。わたくしたちが見守る中、恰幅の良い男性は手に持っていた書状を広げ、大きな声を張り上げる。

「皆の者、静粛に! こちらは王太子殿下ならびにリタ・ヒギンズ伯爵令嬢であらせられる」

 既に静かになっている衆人に対して男性は言う。……女性がロッテではないけれど、この台詞、原作とやっぱり同じだわ……この女性の名前、どこかで聞いたような気がするのはどうしてかしら。

「まつりで楽しんでいるところを邪魔してすまないね」

「殿下……そのようなおっしゃられようは……」

「さっき紹介があったように、彼女はリタ・ヒギンズ伯爵令嬢だ。彼女のことを知っている者もいるだろう。この度、私と彼女は婚約する運びとなった」

 原作と、ほとんど同じ台詞だった。相手がリタ・ビギンズ伯爵令嬢であるということを除けば。……どうして?

「ヒギンズ伯爵令嬢が今後、公の場に顔を出すことも多いだろう。これからは私だけでなく……」

 その後の台詞は、わたくしの耳には全く届かなかった。あまりにも驚きすぎて、ぽかんとしてしまったわたくしは、周囲で湧き上がった歓声と拍手の音でやっと意識を引き戻される。慌てて周りにならって拍手を送った。

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