転生脇役令嬢は原作にあらがえない
 幸せそうに頬を染めたロッテの表情に、わたくしは違和感を覚える。原作のロッティ・アーチボルトは、三人の男性にアプローチを受けて照れることはあっても、こんな風に多幸感に満ちてうっとりとした、というような描写はなかったはず。

「……ロッテは好きな方……というか、結婚を約束している方がいるの?」

「そっそんな、結婚の約束、なんて…………!」

 きゃっと声を上げて、顔をゆでだこのように赤くしたロッテは帽子のつばをきゅうっと引き寄せて顔を隠してしまう。

「ごめんなさい、聞いたらいけなかったのね」

「いいえ! 違うの……! その……は、恥ずかしくて……」

 慌てたロッテはわたくしの手をぎゅっとつかんで弁解する。けれど、ちらりとクレイヴに目をやって、また恥ずかしそうに目を逸らした。

「……私は後ろから少し離れて歩きますので、お嬢様方の秘密のお話でしたら、どうぞ遠慮なく」

 微笑んだクレイヴがそう言うので、わたくしたちは庭園内を再び散策しながら、ロッテの話を聞くことにした。

「あの……結婚の約束を、しているわけでないのだけれど……わたくしの、従兄のお兄さまがね」

「従兄のお兄さま……?」

 びっくりしすぎてつい、おうむ返しで聞き返してしまったわ! けれどロッテは不審に思った様子もなく、頷いて話を続けてくれる。

「そう。わたくしが領地で療養していた話は前にしたでしょう? その時に一緒に暮らしていたお兄さまなのだけれど……彼が、その、わたくしが王都に来る前にね……?」

 ロッテはそこで恥ずかしくなってしまったようで言葉を詰まらせる。

「わ、わたくしと……結婚したい、って……愛してるって、おっしゃられたの」

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