転生脇役令嬢は原作にあらがえない
 当たり前に側にいることを信じてもらえていないことへのほんのちょっぴりの呆れと、離れて欲しくないというポーラの我儘に対する気持ちの高揚で、クレイヴは笑み崩れる。

「私がお嬢様の傍を離れるわけないじゃないですか。一生、お傍に居ますよ」

 そう答えたクレイヴは、その直後に魔力の目覚めをスウィフト家当主に報告した。そうして穏やかな五年を過ごしたが、あの報告が元で日常に変化が訪れたのは突然だった。

「クレイヴ、君のお父上が戻ってきて欲しいと言っている。荷物をまとめて生家に戻りなさい」

「……そ、れは……どういうことですか?」

 執務室に呼び出されたクレイヴは、スウィフト伯爵に言われた言葉を、理解できなかった。フローリー家へは、七歳のあの時出てから一度も帰っていない。

「魔力のある君に爵位を譲りたいそうだ。他のご子息は魔力に目覚めなかったそうでね」

「だからって、今さら……」

「僕は、これは君にとってチャンスだと思うよ?」

 拳を握りしめたクレイヴに、伯爵は静かに声をかける。

「どういうことですか?」

「クレイヴはポーラのことが好きだろう?」

「っなんのことだか」

「そういう茶番はいいんだよ」

 ため息交じりに伯爵に遮られて、クレイヴは黙り込む。チャンス。その言葉にはっとした。

「……私が爵位を継げば、お嬢様に求婚しても良いのですか!?」

「いや、だめだよ」

 言下の否定に、じゃあなぜ、と言おうとして、クレイヴは留まる。反対される理由について、すぐに察しがついた。

「フローリー家が子爵だからですか?」

「そう。さすがクレイヴは賢いね。僕はポーラには、伯爵家以上の家にしか嫁がせる気はないよ。……この意味が君にはわかるだろう?」

 対面した伯爵は、目を細めて髭をいじる。笑顔を絶やさないのが胡散臭い。

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