転生脇役令嬢は原作にあらがえない
 魔力持ちの父は病を得ていて働けず財政難で、長男と次男は魔力がなく父の跡を継げるような状態ではなかった。というのも、フローリー家はもともと領地持ちの家系ではなく、その植物を育成する魔力を認められて爵位を得た家系だ。通常の貴族であれば、魔力持ちでなければ爵位を継げないということはないが、フローリー家に限っては、魔力がなければすなわちそれは家系断絶になってしまうのだ。

 そうしてクレイヴは病に倒れた父の代わりに爵位を継ぎ、一心に仕事に打ち込んだ。けれど、父のしていた仕事をこなすだけでは、爵位をあげるなど夢のまた夢だ。

 フローリー家で育った七年の間に傷ついた心を、スウィフト家でポーラに癒されたクレイヴは、この爵位の問題についてもポーラに救われた。

 品種改良である。

 ポーラが教えてくれた品種改良は、あまりにもクレイヴの持つ植物の育成を操る魔力と相性が良かった。冬咲きの花を春に咲かせるよう改良をしたり、新しい色味の花を作り出したりと様々な花を作り、売り出すことでフローリー家の懐は潤った。しかし、単純な花の売り上げが良いだけで爵位が上がるはずもない。

 この時ヒントになったのも、ポーラの言葉だった。

『毒が抜けるように改良してみたの』

 品種改良は、毒素を強めることも、弱めることもできる。ならば、薬草の薬効を強めることもできるのではないかとクレイヴは思い至ったのだ。

 しかし品種改良元となる薬草は、簡単には見つからない。だから、クレイヴは薬草の産出が多い領地を訪ねた。

「あんた運がいいな。薬草や毒草のことなら、兄貴よりも俺の方が詳しいからな」

 そう言って薬草園を案内してくれたのは、領主の次男坊だった。嫡男は領主と共に公務に当たっており、代わりにと次男坊が案内役をかって出てくれたのである。

「突然押しかけたのに案内をして頂いて恐縮です」

「子爵家ご当主が俺なんかに敬語使う必要ないよ。俺は爵位も継げないで、そのうち家を追い出される身だ。……まあそのおかげで、あいつと一緒にいられるんだけどさ」

「あいつ……?」

< 45 / 50 >

この作品をシェア

pagetop