転生脇役令嬢は原作にあらがえない
 その時頭を下げていたのが王太子であり、この功績を元にして、クレイヴは伯爵位を授かったのだった。

 リタの体調が復帰してから、しばらく経った後に、婚約の発表をするのだと王太子じきじきにクレイヴには伝えられていたから、花まつりの日、唐突に始まった王太子の婚約発表にも、クレイヴは驚かなかったのであった。

 ポーラの意図しない方向に影響を受けた元執事は、無意識のうちの原作の各種のフラグを折りまくり、彼の望む未来をつかみ取っていたのである。

***


 離れていた間につもりすぎた話を、クレイヴはポーラの家で行うお茶会の度に、少しずつ話して聞かせる。その一つ一つに、目をみはって驚くポーラが、可愛かった。

「クレイヴがそんな日々を送ってたなんて、知らなかった……」

「お知らせしませんでしたからね」

「……手紙くらいくれたってよかったのに」

 むぅっと口をとがらせたポーラが可愛くて、クレイヴの顔には笑みがこぼれてしまう。

「貴女に手紙を書けば、きっと会うのを我慢できませんでしたから」

「……それにしたって……お父様も、教えてくれたらよかったのに」

「伯爵様は、もし僕が間に合わなければ、ポーラを別の方に嫁がせるとおっしゃってましたからね」

「それも許せないのよ」

 つん、とそっぽを向いてポーラがむくれる。

 自分だけ蚊帳の外だったのが、面白くないのだろう。

「……私だって、クレイヴが頑張ってるの手伝いたかった」

「お嬢様……」

「またお嬢様って言った」

「ああ、すみません」

 クレイヴは、彼女の手を取ってその甲に口づける。

「もう、秘密は作りませんから、許してくださいますか?」

 唇が手に触れたのを、ポーラは顔を真っ赤にして叫びだしそうな顔をしている。けれど、別のことを思い付いたようで笑う。

「……その敬語を、やめてくれたら許すわ」

 可愛いおねだりに、クレイヴは口元が緩む。

「それは……難しいですね」

 相変わらずの敬語で答えてしまい、彼女の許しを得られなかった有能な元執事は、白旗をあげるのだった。
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