転生脇役令嬢は原作にあらがえない
転生脇役令嬢は原作にあらがわない
 結局、わたくしが原作にあらがうためにしたことのほとんどは意味がなかった。けれど、クレイヴと一緒に過ごした日々は無駄じゃなかったのよ。

 身分違いの求婚をしようとして身を滅ぼしたクレイヴは、現実では身分違いを埋めるために尽力してわたくしと婚約した。原作でアーチボルト侯爵はクレイヴをただ切り捨てただけだったけど、わたくしのお父様は求婚を断るだけじゃなくて、クレイヴに求婚するチャンスを与えたから、クレイヴは誘拐なんて手段に出なかったのね。ここはお父様に感謝だわ。

 告白ができずに他の男性に想い人をかっさらわれて逆上したロッティの従兄は、現実では告白をして正式な求婚をするために努力中。しかも、ロッテも従兄を想って両想い。……原作のロッティ・アーチボルトが元から従兄のことを憎からず思っていたのに、最終的に王太子と婚約したのはきっと、彼女に最初に告白したのが王太子だったからね。現実では彼女に最初に告白したのが従兄だから、こじれずに両想いになったのね。

 初恋の少女を失ってこれ以上愛しい人を失いたくないとロッティと心中した王太子は、現実ではリタ・ヒギンズ嬢を失うことなく、彼女と婚約した。愛しい人を失ったというトラウマがない以上、王太子殿下が誰かと心中の道を選ぶことはないでしょうね。

 まさか、従兄と王太子殿下が原作どおりにならなかったのが、クレイヴのおかげだったなんて思いもよらなかった。しかも、それがわたくしが原作とは関係なく手を出していたお花の品種改良がきっかけだなんて。

 転生脇役令嬢は原作にあらがえない。だけど、転生してないメインキャラは原作を捻じ曲げることができるのね。だから今のこの状況は、クレイヴが掴みとった現実なのよ。

「ポーラ」

 わたくしの名前を呼んだのは、礼服に身を包んだクレイヴ。彼が立っているのは、あの時わたくしに別れを告げた、薄紅の花の木の下だった。木漏れ日の落ちる地面には、ひらひらと花びらが舞う。

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