転生脇役令嬢は原作にあらがえない
 今の季節は秋。全くの季節外れなのに、クレイヴが魔力で咲かせたその花は相変わらず綺麗だった。……でも、季節外れに咲かせるのは、これを最後にしてもらわなきゃ。だって、あんまり何度も魔力で無理やり咲かされたら、花も可哀想だもの。

 そうは思いつつも、薄紅色の花に囲まれていると、クレイヴの青い瞳が綺麗に映えて、わたくしは笑みがこぼれてしまう。薄織りのヴェールを隔ててなお、クレイヴは眩しく、綺麗だわ。

「またこの木に無理をさせたのね?」

「ポーラが好きな花ですから」

「もう……」

 そう言いながら、わたくしは彼の手を取る。そのわたくしの指には、銀色に光る指輪がきらめいた。

「皆さんが、花嫁を待っていますよ」

「あなたのこともね」

 ふふ、と笑って、わたくしはクレイヴと一緒に園庭へと歩き出す。そのわたくしたちの姿を見止めた家族たちが拍手で迎えてくれた。

「おめでとう、ポーラ」

「お幸せに!」

「やってくれたな、クレイヴ!」

 口々にかけられる声に、クレイヴと一緒に微笑みあう。

 人の輪の中心に至ったところで、わたくしたちは止まる。神前での誓いはもう済ませたから、今は集まった人たちの前でのお披露目の口づけをする段なのよ。初めての口づけは緊張をしてしまうけれど、原作では出てこなかったわたくしの婚約に、クレイヴの結婚式。わたくしの手を取ってクレイヴはこれからも隣を歩いてくれる。そのことが、何よりも嬉しい。それはきっと、クレイヴも一緒なのだわ。わたくしの目を見て微笑んだ彼は、わたくしのヴェールを上げてくれた。

「幸せになりましょうね」

「ううん」

 クレイヴの言葉に首を振ったわたくしに、クレイヴは一瞬驚いたような顔をする。

「もう、幸せよ」

「……そうですね」

 やがて穏やかな笑顔になったクレイヴの顔が近づいて、わたくしたちの唇が重なる。そうして、わたくしたちは結ばれた。

 わたくしたちはもう、原作にあらがう必要なんてないのだわ。
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