転生脇役令嬢は原作にあらがえない
お父様の執務室に呼び出されたわたくしは、婚約者とその後の婚礼の予定を知らされたの。クレイヴがわたくしの傍に来てすぐに、弟ができ、後継者の座は弟に移ったわ。だからわたくしは、どこかの家門に嫁いで、慣れ親しんだこの領地から出て行かなければならない。
早ければ十五か十六で嫁ぐ令嬢も少なくはないから、十九にもなって婚約者すらいなかったわたくしの方が珍しいのだわ。
「気に入らないという顔だね、ポーラ」
お父様は困ったようにそう言ったけれど、戸惑うなという方が無理な話よ。けれど、わたくしの答えは決まっているの。
「どなたと結婚しても同じですわ。お父様のお好きなようになさって」
「ポーラ、そんな言い方」
「事実ですもの……わたくしは、わたくしの義務を果たしますわ」
にこりと笑って答えて、わたくしはそのままお父様のお部屋を辞したから、お相手が伯爵であるということ以外、婚約者様の名前すら知らないの。失礼な話だとは思うわ。けれど、突然婚約を申し込んで式の前日まで顔を見せない婚約者様だって相当だと思うの。義務は果たすし、そのうち……子どもも設けることになるでしょうね。けれど、あちらが礼儀をわきまえないのであれば、わたくしがお行儀よくする必要もないもの。
明日が結婚式だというのに、今日が顔合わせだからと言って、メイドたちはわたくしの身なりをとても綺麗に整えてくれた。
そんな必要ないのに。
わたくしは今、庭に出されたテーブルセットに座って、婚約者様を待っているの。くしくもその場所は、クレイヴがわたくしに別れを告げた場所。あの時クレイヴが庭で咲かせた花はとっくに散ってしまったけれど、本来咲く季節に近づいたからか、しなだれた枝先には小さなつぼみがいくつもついている。前世のしだれ桜と同じこの花は、春先にほんの一瞬だけ咲いて、すぐに散ってしまう。
そんな枝先を見ていられなくて、わたくしは俯いた。
早ければ十五か十六で嫁ぐ令嬢も少なくはないから、十九にもなって婚約者すらいなかったわたくしの方が珍しいのだわ。
「気に入らないという顔だね、ポーラ」
お父様は困ったようにそう言ったけれど、戸惑うなという方が無理な話よ。けれど、わたくしの答えは決まっているの。
「どなたと結婚しても同じですわ。お父様のお好きなようになさって」
「ポーラ、そんな言い方」
「事実ですもの……わたくしは、わたくしの義務を果たしますわ」
にこりと笑って答えて、わたくしはそのままお父様のお部屋を辞したから、お相手が伯爵であるということ以外、婚約者様の名前すら知らないの。失礼な話だとは思うわ。けれど、突然婚約を申し込んで式の前日まで顔を見せない婚約者様だって相当だと思うの。義務は果たすし、そのうち……子どもも設けることになるでしょうね。けれど、あちらが礼儀をわきまえないのであれば、わたくしがお行儀よくする必要もないもの。
明日が結婚式だというのに、今日が顔合わせだからと言って、メイドたちはわたくしの身なりをとても綺麗に整えてくれた。
そんな必要ないのに。
わたくしは今、庭に出されたテーブルセットに座って、婚約者様を待っているの。くしくもその場所は、クレイヴがわたくしに別れを告げた場所。あの時クレイヴが庭で咲かせた花はとっくに散ってしまったけれど、本来咲く季節に近づいたからか、しなだれた枝先には小さなつぼみがいくつもついている。前世のしだれ桜と同じこの花は、春先にほんの一瞬だけ咲いて、すぐに散ってしまう。
そんな枝先を見ていられなくて、わたくしは俯いた。