転生脇役令嬢は原作にあらがえない
有能な元執事は婚約者に結婚延期を望まれる
 庭園でクレイヴと再会したポーラは、その後、用意されていたお茶で和やかな時間を過ごしていた。何しろ二年もの間離れていたのだ、つもる話は沢山ある。

 久々に穏やかで楽しいひと時が過ぎていたが、にこにことしながらクレイヴの言った次の言葉でポーラはティーカップを取り落としそうになってしまった。

「明日は結婚式ですね、お嬢様」

 さあっと血の気を引かせたが、ポーラはなんとかそっとティーカップを下ろす。

「ま、待って! 明日が結婚式だなんてどう考えても無理よ。クレイヴ、式は延期しましょう?」

 ポーラの言い分はもっともだった。

 貴族同士の政略結婚においては、婚礼の当日まで顔合わせしないという例もあるのだから、今日顔合わせをして明日婚礼をすること自体は、そこまで突飛な話ではない。問題は期間だ。

 普通に考えたら、伯爵令嬢の結婚準備は、何か月もかけて行うものである。ポーラに婚約者ができたと知らされたのは一カ月前なのだから、準備が万全だとは決して言えないだろう。

 焦った様子のポーラに対して、クレイヴは悠然と首を振った。

「大丈夫です、私が全て手配いたしましたよ」

「だめよ! クレイヴと結婚するだなんて思ってなかったから、わたくし何にもチェックしていないもの!」

 婚礼衣装の採寸や仮縫いの衣装合わせは行っていたが、結婚に対して前向きになれなかったポーラは姿見でドレスを着た姿を見てすらしていないし、衣装については伝統通りに白かったことくらいしか覚えていない。

 けれど、ポーラの焦りとは裏腹に、クレイヴは笑顔を崩さなかった。

「そうですか? では、確認しにまいりましょうか」

 言いながらクレイヴは立ち上がると、ポーラに手を差し出した。

「え?」

 またも驚きの表情で固まるポーラに対して、クレイヴは飽くまで悠然としている。

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