【完結】前世を思い出した瞬間、超絶好みの騎士様から求婚されましたが、とりあえず頷いてもいいかしら?

3.クラリス②

(莉子の記憶が戻ってよかった)

 まさかそんなことを思う日が来るなんて思わなかったが、それはクラリスの素直な気持ちだった。

 前世を思い出して寂しくなったことは確かだし、なんの役にも立たないと思ったことも事実だけど、莉子の記憶のおかげでバルトと友達になれた。それだけでも感謝しかない。

 相変わらず小間使い扱いは変わらないけれど、記憶と魔法の有効活用で今までより手際よく色々片付けられるようになったから、結果、時間に余裕もできた。
 少し前なら夜更けにようやく疲れて眠るような毎日だったのに、今は体力にも気持ちにも余裕ができたうえ、仕事終わりにお楽しみができた。
 時間が許す限り、バルトが会いに来てくれるようになったのだ。

「やあ、クラリス。途中の屋台で揚げ菓子を買ったんだ。一緒に食べないか?」

 そんな気軽さで来てくれるバルトと、他愛もない話をして笑いあう。ただそれだけなのに、一日の終わりが満ち足りた気持ちになった。

 莉子の記憶のおかげで、自分を客観視できるようになったのも大きいだろう。
 前世の自分は今のクラリスよりも大人の女性だ。そんな大人の目で今の自分を見てしまうと、「若いのにもったいないわね!」、ということになってしまうのが面白い。

『いいわねえ、十代。でもね、お肌も髪も、今のうちに手入れをしっかりするべきなのよ? 髪だってこうしたほうが似合うし絶対可愛いわ!』

 そんな莉子の幼馴染である百花の声まで聞こえてきて、できる範囲で美容にも気をつけるようになった。

(百花たちも転生してくれてたらよかったのに……)

 彼女らがまるですぐ側にいるみたいなのに本当はいなくて、懐かしくて少し寂しくて、でも心の支えになる。
 そんな不思議な感じはきっと、今のクラリスにいい影響を与えているのだろう。ある日、父が何か考え込んだような顔をし、クラリスにも家庭教師をつけてくれたのだ。
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