【完結】前世を思い出した瞬間、超絶好みの騎士様から求婚されましたが、とりあえず頷いてもいいかしら?


 正直なところ、クラリスにとって初めの頃のバルトは、前世でいうところの「推し」だったのだと思う。
 最初はルックスが好みすぎて、彼の姿を思い出すだけで頬が緩んで仕方なかった。声も大好きで、名前を呼ばれると嬉しくて幸せでたまらなかった。

 男らしくて、でもクラリスと年齢に差があるからか、すごく紳士的に距離を保ってくれる人。

 クラリスを令嬢に憧れる女の子だと思ったのか、いつも挨拶に手の甲のキスをしてくれた。それは貴族の令嬢が受けるごく当たり前の尊敬の印でしかないけれど、莉子の意識が、あまりにも馴染みのない習慣に照れてしまったっけ。

 柔らかな声で「またね」とか、「おやすみ」と言われるのが好き。
 頬にお休みのキスをしてくれるようになったときは、照れよりも嬉しさのほうが上回ってしまい、お返しに背伸びをして彼の頬にチュッとしてしまった。

(まさかあんなに照れられるとは思わなかったけど。……バルトさん、可愛かったな)

 おやすみのキスは、マルゴや彼女の母である乳母にだってする。でも男性にするのは、幼いころ父にしたのが最後だった。だからちょっと照れちゃうくらいの気持ちでいたのに、首まで真っ赤になってしまったバルトの顔に、再度ノックアウトされてしまった莉子……もといクラリスは、かなりちょろい女なのかもしれない。

(でもでも、男らしい男性のあんな顔、絶対反則だもの)


 街で偶然ほかの団員たちに遭遇したときは、「団長の求婚を断った噂の女の子だ!」とやたらウケていたが、そんな彼らにすんなり受け入れられたうえ、和気あいあいとバルトの色々な話が聞けるようになって楽しい。

(顔を真っ赤にして「散れ!」ってみんなに言ってるバルトさん、おかしかったなぁ)

 好みの権化のような彼は、知れば知るほど素敵な人だった。好きにならないはずがない。好きで好きで大好きで、でもこれは、けっして恋ではない。そんな存在。

 いや。本気で恋をしてはいけないと、自分の心を常に戒めるようにしていた。

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