【完結】前世を思い出した瞬間、超絶好みの騎士様から求婚されましたが、とりあえず頷いてもいいかしら?

  ◆

 秋が深まり、冬が訪れる。
 バルトの代わりに、焔騎士団には新しい団長が就任した。

 親しくなれたと思っていた騎士たちとは自然と疎遠になったが、唯一ガスパーを通してのみ、マルゴ経由でバルトの様子を知ることが出来た。

「そう。バルトさん、サキュラに行ったの……」

 サキュラは、エーテ領をはじめとする十七の小領地を束ねる大領地の都だ。騎士を引退したバルトはここには戻らず、サキュラで働くことになったらしい。

 別れの挨拶くらいしたかったとも思うが、日本のように庶民が気楽に使える連絡手段は手紙だけだ。それでも裕福な庶民であれば旅行の機会もあるだろうが、クラリスにも騎士であるバルトにも、そんな自由はない。

「バルトさん、まだ利き手が不自由らしいです」

 そう言って、マルゴが預かってきたという手紙を差し出した。

 ――――心配かけてごめん。絶対に会いに行く。バルト――――

 苦労して書いたような筆跡に涙があふれた。
 おそらくもう会えない。分かっているのに、会いに行くと言ってくれたバルトの優しさに心が震えた。一枚の紙切れに彼のぬくもりが宿っているような気がして、そっと胸に抱きしめる。

(会いたいです、バルトさん……)

 会いたい。あなたの声を聴きたい。

(でも、あなたが生きていてくれただけで充分)

 バルトが大怪我を負ったと知った時の恐怖は、二度と味わいたくない。無事生きてくれていれば、それだけでいい。

 返事を預かってくれるというので、短い手紙を託した。
 騎士団経由で届けるにしても、彼に届くのはきっとずっと先のことだろう。届かない可能性もある。それでもよかった。

 彼との思い出は、心の奥に大切にしまっておこう。
 消せない気持ちも見ないふりをしていけば、きっといつか思い出になるはずだから。
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