前世を思い出した瞬間、超絶好みの騎士様から求婚されましたが、とりあえず頷いてもいいかしら?

3

(漢字が苦手だから、中華風じゃなかっただけよかったと思うべきかしら)

 ふと打ち上る花火を見ながら、猛烈な淋しさに押しつぶされそうになる。それを振り払うためになんとなく、「ステータスオープン」と呟いてみた。

 ……何も起こらなかった。

「うん、知ってた」

 もしかしたら転生チートとかいうやつで、今まで存在も知らなかったものが突然見えるかも? なんて、期待しなかったと言えばウソになる。

 でも考えてみれば、もう一つのお約束であるらしい、神様みたいな存在に会った覚えがない。

 これはもう普通に莉子は天寿を全うして、魂がふらっと地球外に出てしまったとかそんなところなのだろう。同じような文明を辿った世界に来てしまったとか、もしかしたら宇宙開発の進んだ遥か未来かもしれない。

 それならちょっとわかる気がする。ファンタジーじゃなくてSFだ。

(ま、どっちにしても、前世の記憶とかいらないわぁ)

 ごくごく平凡な人生しか歩んできてないし、違う世界の記憶なんて、役に立ちそうにもない。むしろ混乱と寂しさの原因にしかならないし、これなら友人たちの方がうまく立ち回れそうだ。なんで自分だったのだと恨めしくさえ思う。

(莉子だった頃の私は結婚したのかなぁ)

 脳みそは違うはずなのに記憶を探ってみれば、あのあと開かれた真央の結婚式の記憶がある。

 優しそうな旦那様は、真央の幼馴染のお兄さん。その隣で長年の恋を叶えた、幸せそうな友達の笑顔。その記憶はクラリスの胸を温かく満たした。
< 3 / 7 >

この作品をシェア

pagetop