【完結】前世を思い出した瞬間、超絶好みの騎士様から求婚されましたが、とりあえず頷いてもいいかしら?
2.バルト①
いい年をした男が、求婚した相手から友達になろうと提案された。
「へっ? バルト団長、フラれたんすか?」
「ちげーよ。可愛いお嬢さんとお友達になったんだよなぁ、だんちょー」
春祭りの翌日。騎士団内では、昨夜の求婚劇が面白おかしく噂になっていた。
それもそうだろう。罰ゲームとはいえ求婚の答えが友達になろうだなんて、一風変わった断り文句としか思えない。とはいえ、普通であれば、「好みじゃない」とか「失せろ」くらい言われてもおかしくないことなのだ。それを考えれば、相手が優しい女の子でよかったですねーくらいの、完全ないじりである。
しかし、いくらからかわれてもバルトが気にならなかったのは、クラリスの言葉が誠意に満ちたものだからだ。
個人的な事情から、ちょうど嫁探しに本腰を入れようかと思っていた時だった。
バルトが所帯を持てばいい加減、継母も異母弟もバルトを跡継ぎにすることを諦めると思ったから。
(本来跡継ぎだった姉上は、幼少期から絶対継がないの一点張りだったからなぁ。俺が逃げても呆れるだけで、みんなすぐに諦めると思ってたんだよ)
五歳上の姉は、彼女が七歳の時に出会った男に一目ぼれし、絶対彼の嫁になると主張し続け、本当に結婚した。弟が二人もいるのだから、跡継ぎには困らないだろうと晴れやかに笑ったのを今もはっきりと覚えている。
しかし本当は姉もバルト同様、自分には父の後を継ぐ資格はないと考えていたことに、バルトは気づいていた。
(もっとも、実母に似て、惚れたら猪突猛進に突き進む質だったと言われたら、まったく否定できないんだがな)
バルトの母親は、バルトを生んですぐに駆け落ちをしたという。
運命の人に巡り合ってしまったの! という書き置きを残して消えた母を、姉は恨んでもいたが、その血を否定できないと漏らしていたこともあるからだ。
(顔も覚えてない母を擁護するわけじゃないが、父も大概クセが強い人だからなぁ)
とはいえ、男児を生んでお役御免とばかりに駆け落ちするような女の息子より、継母から生まれた弟のほうがはるかに優秀で、爵位を継ぐのにふさわしい。そう思うのは当然のことだろう。
バルトとしては華やかな場にいるよりも、今のような生活のほうが合っていると思っている。実際、魔獣が人に害を為さないよう策を立て、時に戦うことはやりがいがある仕事だ。
三年前には比較的小さな団とは言え、二十五歳という若さで焔騎士団の団長にもなった。
父親からは、「ま、いいんじゃないか?」という感じだし、幼かった弟のサシャも十六になった。そろそろ縁談の話も出てきているらしい。
これで、バルトにとっては可愛くて仕方がない自慢の弟が、素直に家を継ぐものだと信じたのだ。彼が父の仕事の手伝いもしていると聞けば、普通そう思う。
なのにその弟も継母も、まだ放蕩息子のことをあきらめていないと知って、内心焦った。
つまらないことにこだわっているのはバルトだけだと言われても、バルト自身は絶対弟のほうが後継者にふさわしいと思っているし、その考えを変える気はさらさらない。
だから一日でも早く庶民の可愛い女を見つけて、とっとと所帯を持ってしまおうと決心したのだ。
「へっ? バルト団長、フラれたんすか?」
「ちげーよ。可愛いお嬢さんとお友達になったんだよなぁ、だんちょー」
春祭りの翌日。騎士団内では、昨夜の求婚劇が面白おかしく噂になっていた。
それもそうだろう。罰ゲームとはいえ求婚の答えが友達になろうだなんて、一風変わった断り文句としか思えない。とはいえ、普通であれば、「好みじゃない」とか「失せろ」くらい言われてもおかしくないことなのだ。それを考えれば、相手が優しい女の子でよかったですねーくらいの、完全ないじりである。
しかし、いくらからかわれてもバルトが気にならなかったのは、クラリスの言葉が誠意に満ちたものだからだ。
個人的な事情から、ちょうど嫁探しに本腰を入れようかと思っていた時だった。
バルトが所帯を持てばいい加減、継母も異母弟もバルトを跡継ぎにすることを諦めると思ったから。
(本来跡継ぎだった姉上は、幼少期から絶対継がないの一点張りだったからなぁ。俺が逃げても呆れるだけで、みんなすぐに諦めると思ってたんだよ)
五歳上の姉は、彼女が七歳の時に出会った男に一目ぼれし、絶対彼の嫁になると主張し続け、本当に結婚した。弟が二人もいるのだから、跡継ぎには困らないだろうと晴れやかに笑ったのを今もはっきりと覚えている。
しかし本当は姉もバルト同様、自分には父の後を継ぐ資格はないと考えていたことに、バルトは気づいていた。
(もっとも、実母に似て、惚れたら猪突猛進に突き進む質だったと言われたら、まったく否定できないんだがな)
バルトの母親は、バルトを生んですぐに駆け落ちをしたという。
運命の人に巡り合ってしまったの! という書き置きを残して消えた母を、姉は恨んでもいたが、その血を否定できないと漏らしていたこともあるからだ。
(顔も覚えてない母を擁護するわけじゃないが、父も大概クセが強い人だからなぁ)
とはいえ、男児を生んでお役御免とばかりに駆け落ちするような女の息子より、継母から生まれた弟のほうがはるかに優秀で、爵位を継ぐのにふさわしい。そう思うのは当然のことだろう。
バルトとしては華やかな場にいるよりも、今のような生活のほうが合っていると思っている。実際、魔獣が人に害を為さないよう策を立て、時に戦うことはやりがいがある仕事だ。
三年前には比較的小さな団とは言え、二十五歳という若さで焔騎士団の団長にもなった。
父親からは、「ま、いいんじゃないか?」という感じだし、幼かった弟のサシャも十六になった。そろそろ縁談の話も出てきているらしい。
これで、バルトにとっては可愛くて仕方がない自慢の弟が、素直に家を継ぐものだと信じたのだ。彼が父の仕事の手伝いもしていると聞けば、普通そう思う。
なのにその弟も継母も、まだ放蕩息子のことをあきらめていないと知って、内心焦った。
つまらないことにこだわっているのはバルトだけだと言われても、バルト自身は絶対弟のほうが後継者にふさわしいと思っているし、その考えを変える気はさらさらない。
だから一日でも早く庶民の可愛い女を見つけて、とっとと所帯を持ってしまおうと決心したのだ。