【番外編更新】虐げられた私の身代わり婚約、そして見つけた幸せ
「ブレンダ様、こちらでございます」
私の後ろから声をかけてきた者がいた。彼は燕尾服を着て礼を執っている。彼の顔が私を見据えると、私は誰? と言わんばかりに首を傾げた。
「伯爵卿の手の者です」
本来であれば、私はこの男の後ろについて、馬車へと移動しなくてはならない。そして伯爵邸や他の者たちの所有する屋敷を転々としながら、王国へ戻ることになるのだろう。
「さあ、こちらへ」
相手の男は足早に歩いていく。彼は私が付いてくるものだと思っていたはずだ。数歩進んだところで、私が足を出していないことに気がついたのか、首を傾げながら私へと振り向いた。
「時間がございません。早くお願い――」
「……ないわ」
「えっ?」
怪訝な表情を浮かべる相手に、私は再度告げた。
「申し訳ございませんが、私は王国には戻りませんわ」
「なっ……?!」
にこやかに告げる私に、相手の男は「話が違う」と言わんばかりの顔で、私を睨みつけている。それはそうだ。言葉を喋った上、その第一声が王国には戻らないだったのだから。この驚きようを見ると、伯爵卿からは「素直に言うことを聞いてくれると思いますよ」とでも言われているかもしれない。
相手の男は眉間に深い皺を刻みつけて色々と言いたげな表情をしている。しかし、私を説得するよりも連れ去った方が良いと思ったのだろうか……男は腰に二本の短刀を身につけていたが、それを抜くことなく動き始めた。
相当な腕利きなのだろう。目にも留まらぬ速さで動くため、私はその場に留められてしまう。
逃げることも叶わず、思わず目を瞑ったその時――。
私の後ろから声をかけてきた者がいた。彼は燕尾服を着て礼を執っている。彼の顔が私を見据えると、私は誰? と言わんばかりに首を傾げた。
「伯爵卿の手の者です」
本来であれば、私はこの男の後ろについて、馬車へと移動しなくてはならない。そして伯爵邸や他の者たちの所有する屋敷を転々としながら、王国へ戻ることになるのだろう。
「さあ、こちらへ」
相手の男は足早に歩いていく。彼は私が付いてくるものだと思っていたはずだ。数歩進んだところで、私が足を出していないことに気がついたのか、首を傾げながら私へと振り向いた。
「時間がございません。早くお願い――」
「……ないわ」
「えっ?」
怪訝な表情を浮かべる相手に、私は再度告げた。
「申し訳ございませんが、私は王国には戻りませんわ」
「なっ……?!」
にこやかに告げる私に、相手の男は「話が違う」と言わんばかりの顔で、私を睨みつけている。それはそうだ。言葉を喋った上、その第一声が王国には戻らないだったのだから。この驚きようを見ると、伯爵卿からは「素直に言うことを聞いてくれると思いますよ」とでも言われているかもしれない。
相手の男は眉間に深い皺を刻みつけて色々と言いたげな表情をしている。しかし、私を説得するよりも連れ去った方が良いと思ったのだろうか……男は腰に二本の短刀を身につけていたが、それを抜くことなく動き始めた。
相当な腕利きなのだろう。目にも留まらぬ速さで動くため、私はその場に留められてしまう。
逃げることも叶わず、思わず目を瞑ったその時――。