この夜の意味〜声にできない恋を隠したら、完全無欠な御曹司の本気スイッチ入りました〜(旧:RISKY〜不敵な御曹司との恋は避けるべき〜)
二十年ぶりの知らせ
滅多に雪を見ない世界で生きる私たちの前に、白銀の景色が広がっている。そんな慣れない出来事にすんなり適応できないのもまた、私たちの宿命だ。
普段は静かなはずの店内だが、温かさを求めて辿り着いたお客たちが、次々と入ってくる。そんなここにいる全員の共通の話題が、今日はもう一つあった。
「はぁ……東条様、また熱愛出たよ……」
「今度の相手は?どんな人なの?」
「なんか、どっかの会社の社長令嬢らしいよ。
でもさ?あの色気ムンムンな黒髪スーツで、数々の大物を落としてきた男だよ?相手も絶世の美女に決まってるって……」
東条グループの後を継ぐ者として発表された32歳の若き新社長、東条宗高。世の女性たちからは東条様と崇められている。
そんな女性人気の高い彼だが、就任早々「北里コーポレーションの令嬢と付き合っているのでは?」と巷を騒がせているのだ。
でも私は知っている、その噂が真っ赤な嘘であると。なぜなら私こそが、東条宗高の身辺を探る記者だからだ。
それにしても、今日は見事にどの席からもその人の名前が聞こえてくる。最も聞きたくない言葉が、貴重なプライベートの時間にも耳に入ってくるなんて……。
こんな二十年ぶりの大雪などなければ、いっそここからも逃げ出してしまいたいくらいだ。
「ねぇ、文乃。この記事見てよ?」
退屈しのぎにするには少々気が滅入る噂話に代わって、目の前から新たな暇つぶしの材料が提供される。
スマホの画面を差し出してきたのは、同じくフリー記者の尚美だ。
「東条グループ新社長と北里コーポレーションの一人娘、結婚秒読みか?」
今日のSNSもずっとこの話題で持ちきりらしい。ただ、やはりどんな記事を読んでも、その中身は推測ばかりで根拠となる証拠なんてひとつも書かれていない。
「こんな内容であいつの足を引っ張れるわけないんだって…」
またかと呆れながら、ざっと目を通したその画面を突き返して、残りのコーヒーを飲み干そうとカップに口をつけると
「じゃあさ、この情報はどうかな?」
と尚美はウキウキとしたうわずり声で私の心をくすぐってくる。
そして、まるで私の心をもてあそぶかのように長い沈黙が続く。恐らくこの流れで考えるなら、東条に関する情報に違いない。
手に持つカップは確かに傾いているのに、その中身は一気に喉を通らなくなる。全く中身が減っていないそれを、私は潔く置いてみせた。
「もーう!尚美!もったいぶらないで、早く教えてよ」
尚美は待ってましたと言わんばかりに、まっすぐと胸元まで伸びたブロンドヘアと、チェスターコートの深い襟を手で軽く押さえながら、乗り出すように私の耳元に近づく。
「ここだけの話。彼、今日の午後会見するんだって」
普段は静かなはずの店内だが、温かさを求めて辿り着いたお客たちが、次々と入ってくる。そんなここにいる全員の共通の話題が、今日はもう一つあった。
「はぁ……東条様、また熱愛出たよ……」
「今度の相手は?どんな人なの?」
「なんか、どっかの会社の社長令嬢らしいよ。
でもさ?あの色気ムンムンな黒髪スーツで、数々の大物を落としてきた男だよ?相手も絶世の美女に決まってるって……」
東条グループの後を継ぐ者として発表された32歳の若き新社長、東条宗高。世の女性たちからは東条様と崇められている。
そんな女性人気の高い彼だが、就任早々「北里コーポレーションの令嬢と付き合っているのでは?」と巷を騒がせているのだ。
でも私は知っている、その噂が真っ赤な嘘であると。なぜなら私こそが、東条宗高の身辺を探る記者だからだ。
それにしても、今日は見事にどの席からもその人の名前が聞こえてくる。最も聞きたくない言葉が、貴重なプライベートの時間にも耳に入ってくるなんて……。
こんな二十年ぶりの大雪などなければ、いっそここからも逃げ出してしまいたいくらいだ。
「ねぇ、文乃。この記事見てよ?」
退屈しのぎにするには少々気が滅入る噂話に代わって、目の前から新たな暇つぶしの材料が提供される。
スマホの画面を差し出してきたのは、同じくフリー記者の尚美だ。
「東条グループ新社長と北里コーポレーションの一人娘、結婚秒読みか?」
今日のSNSもずっとこの話題で持ちきりらしい。ただ、やはりどんな記事を読んでも、その中身は推測ばかりで根拠となる証拠なんてひとつも書かれていない。
「こんな内容であいつの足を引っ張れるわけないんだって…」
またかと呆れながら、ざっと目を通したその画面を突き返して、残りのコーヒーを飲み干そうとカップに口をつけると
「じゃあさ、この情報はどうかな?」
と尚美はウキウキとしたうわずり声で私の心をくすぐってくる。
そして、まるで私の心をもてあそぶかのように長い沈黙が続く。恐らくこの流れで考えるなら、東条に関する情報に違いない。
手に持つカップは確かに傾いているのに、その中身は一気に喉を通らなくなる。全く中身が減っていないそれを、私は潔く置いてみせた。
「もーう!尚美!もったいぶらないで、早く教えてよ」
尚美は待ってましたと言わんばかりに、まっすぐと胸元まで伸びたブロンドヘアと、チェスターコートの深い襟を手で軽く押さえながら、乗り出すように私の耳元に近づく。
「ここだけの話。彼、今日の午後会見するんだって」