この夜の意味〜声にできない恋を隠したら、完全無欠な御曹司の本気スイッチ入りました〜(旧:RISKY〜不敵な御曹司との恋は避けるべき〜)
二十年ぶりの知らせ
ベロアの真っ赤なソファに背を預けて、窓の外の雪景色を眺めている。
ここは住宅と住宅の狭間に並ぶ古民家カフェ。
いつもは、見える人もまばらだ。
でも、今日は、よく人が通る。
ハアハアと白い息を吐きながら。
とても、歩きにくそうに。
「カラン、コロン」
そして、普段は、静かな店内だけど、ドアがしきりに音を出す。冷たい風が、入ってくる。
でも、また、すぐに温かいだけになる。
二人の女性が、私の横を過ぎていく。
隣のボックスに座る。
誰もが、一言目に、必ずこう言う。
「寒かったね……!」
「……ね!」
チラッと、目を動かす。
でも、もう隣の女性たちは、はっきり見えない。
店員さんが、前を通っていく。
私に、背を向ける。
「あっ、コーヒー一つ」
「私も!!」
「かしこまりました」
また、店員さんが通っていく。
もう、そこにはいない。
だから、二人の女性がはっきり見える。
こんな声が、聞こえてくる。
「……で?東条様、今度の相手は?どんな人なの?」
「なんか、どっかの会社の社長令嬢らしいけどさ。数々の大物を落としてきた男だからね。相手も絶世の美女に決まってるよ」
東条グループの後を継ぐ者として発表された32歳の若き新社長、東条宗高。
世の女性たちからは、東条様と崇められている。
そんな女性人気の高い彼だが、就任早々「北里コーポレーションの令嬢と付き合っているのでは?」と巷を騒がせているのだ。
でも私は、知っている。
その噂が、真っ赤な嘘であると。
なぜなら私こそが、東条宗高の身辺を探る記者だからだ。
それにしても、今日は見事にどの席からもその人の名前が聞こえてくる。最も聞きたくない言葉が、貴重なプライベートの時間にも耳に入ってくるなんて……。
こんな二十年ぶりの大雪などなければ、いっそここからも逃げ出してしまいたいくらいだ。
「ねぇ、文乃。この記事見てよ?」
そう言いながら、スマホの画面を差し出してきたのは、同じくフリー記者の尚美だ。
「東条グループ新社長と北里コーポレーションの一人娘、結婚秒読みか?」
今日のSNSも、ずっとこの話題で持ちきりらしい。ただ、やはりどんな記事を読んでも、その中身は推測ばかりで、根拠となる証拠なんてひとつも書かれていない。
「だから、こんな内容で東条の足を引っ張れるわけがないんだって……」
私は、またかと呆れながら、もうその画面を見ない。
コーヒーカップに視線を移す。
ハンドルに指をかけて、持ち上げる。
口縁に口をつける。
コーヒーの揺れを見つめる。
「じゃあさ、この情報はどうかな?」
でも、私は顔を上げる。
カップは、一向に傾かない。
だって、恐らくこの流れで考えるなら、東条に関する情報に、違いないから。
「なに?もったいぶらないで、早く教えてよ」
そう、顔をきつくしながら。
強く、言った。
でも、尚美は、くすくすと笑う。
私のことを、誰よりもよく知ってるから。
笑いながら。
まっすぐと胸元まで伸びたブロンドヘアと、チェスターコートの深い襟を軽く押さえて、乗り出すように私の耳元に近づいてくる。
「ここだけの話。彼、今日の午後会見するんだって」
ここは住宅と住宅の狭間に並ぶ古民家カフェ。
いつもは、見える人もまばらだ。
でも、今日は、よく人が通る。
ハアハアと白い息を吐きながら。
とても、歩きにくそうに。
「カラン、コロン」
そして、普段は、静かな店内だけど、ドアがしきりに音を出す。冷たい風が、入ってくる。
でも、また、すぐに温かいだけになる。
二人の女性が、私の横を過ぎていく。
隣のボックスに座る。
誰もが、一言目に、必ずこう言う。
「寒かったね……!」
「……ね!」
チラッと、目を動かす。
でも、もう隣の女性たちは、はっきり見えない。
店員さんが、前を通っていく。
私に、背を向ける。
「あっ、コーヒー一つ」
「私も!!」
「かしこまりました」
また、店員さんが通っていく。
もう、そこにはいない。
だから、二人の女性がはっきり見える。
こんな声が、聞こえてくる。
「……で?東条様、今度の相手は?どんな人なの?」
「なんか、どっかの会社の社長令嬢らしいけどさ。数々の大物を落としてきた男だからね。相手も絶世の美女に決まってるよ」
東条グループの後を継ぐ者として発表された32歳の若き新社長、東条宗高。
世の女性たちからは、東条様と崇められている。
そんな女性人気の高い彼だが、就任早々「北里コーポレーションの令嬢と付き合っているのでは?」と巷を騒がせているのだ。
でも私は、知っている。
その噂が、真っ赤な嘘であると。
なぜなら私こそが、東条宗高の身辺を探る記者だからだ。
それにしても、今日は見事にどの席からもその人の名前が聞こえてくる。最も聞きたくない言葉が、貴重なプライベートの時間にも耳に入ってくるなんて……。
こんな二十年ぶりの大雪などなければ、いっそここからも逃げ出してしまいたいくらいだ。
「ねぇ、文乃。この記事見てよ?」
そう言いながら、スマホの画面を差し出してきたのは、同じくフリー記者の尚美だ。
「東条グループ新社長と北里コーポレーションの一人娘、結婚秒読みか?」
今日のSNSも、ずっとこの話題で持ちきりらしい。ただ、やはりどんな記事を読んでも、その中身は推測ばかりで、根拠となる証拠なんてひとつも書かれていない。
「だから、こんな内容で東条の足を引っ張れるわけがないんだって……」
私は、またかと呆れながら、もうその画面を見ない。
コーヒーカップに視線を移す。
ハンドルに指をかけて、持ち上げる。
口縁に口をつける。
コーヒーの揺れを見つめる。
「じゃあさ、この情報はどうかな?」
でも、私は顔を上げる。
カップは、一向に傾かない。
だって、恐らくこの流れで考えるなら、東条に関する情報に、違いないから。
「なに?もったいぶらないで、早く教えてよ」
そう、顔をきつくしながら。
強く、言った。
でも、尚美は、くすくすと笑う。
私のことを、誰よりもよく知ってるから。
笑いながら。
まっすぐと胸元まで伸びたブロンドヘアと、チェスターコートの深い襟を軽く押さえて、乗り出すように私の耳元に近づいてくる。
「ここだけの話。彼、今日の午後会見するんだって」