この夜の意味〜声にできない恋を隠したら、完全無欠な御曹司の本気スイッチ入りました〜(旧:RISKY〜不敵な御曹司との恋は避けるべき〜)
女性絡みのスクープなんて、今に始まったことじゃない。

現にこれまで、大企業の娘から世界で活躍するモデルに女優まで、ありとあらゆる女性たちと交際の噂がささやかれてきた。

今回のお相手は、北里コーポレーションの一人娘。

どの記事でも名前が伏せられていることからも分かるように、東条グループと比べると決して規模の大きな会社とは言いがたい。

大物政治家の娘と婚約報道が出たときだって会見すら開かなかったのに、どういう風の吹きまわしだろうか?

宗高にはどんな狙いがあるのか。とにかくこの目で確かめてみないことには真実は分からないだろう。

私は、がしゃんとコーヒーカップを置いた。
立ち上がった。バッグを肩にかけた。

「ちょっと、今から行ってくる」
「えっ?その格好で?」 

でも、私は、止まった。
ガラス越しに、自分の姿を確認した。

丸い栗色ショートヘア。
上は白のダウンジャケットに、下は黒のタイトジーンズ。

身長の割に長くスラっと伸びた脚が強調されていることくらいしか、誇れるものはない。
そして普段から化粧は気持ち程度にしかしないが、今日はそれすらもしていない。

チラッと、横を見る。
目の周りにキラキラとラメが輝き、唇はくっきりと赤く縁取られている。

でも、私は、もうそんなこと気にしていられない。

東条グループを、地の底まで突き落とす。
そのためだけに、生きてきたんだから。

あの日から、ずっと、のうのうと生きてきた彼らを。絶対に、逃がさない。

カバンの中から、ガサゴソと財布を取り出す。
千円札を一枚、机の上に叩きつける。

駆け足で、寒空の下に出ていく。

ぐしゃぐしゃとした、スニーカー裏の感覚を、まるで当然のように受け入れながら。
向かってくる冷たい風を、身で切りながら。

とにかく交通量の多い大通りに出る。

本来なら電車にでも乗りたいところだ。

だって、私たちのように欲しい情報を探る片手間に、記者をやっていると、正直、生活をするだけでもかなり厳しい。

でも、今日のような日には、それが正常に動いているかどうかすらもわからない。もちろん会見はそんな気候の気まぐれに、付き合ってくれるはずもない。

だから、ダメ元で、力強く手を伸ばす。
すると、幸いすぐに一台のタクシーが止まってくれた。

ドアが、開いた。

「どちらまで?」
「東条グループ本社まで、お願いします」
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