この夜の意味〜声にできない恋を隠したら、完全無欠な御曹司の本気スイッチ入りました〜(旧:RISKY〜不敵な御曹司との恋は避けるべき〜)
キスが起こした変化
この三日間は日が落ちると、消灯された部屋で意味もなく街頭の小さな光ばかり眺めていた。だから、今日は目の前の格式高い建物から漏れ出た無数の光も、一層刺激が強く感じられる。
時刻は夜の19時。私は社長の指示どおり、男性としてパーティーの受付を進める。
「どなたかの護衛の方ですか?」
「東条グループです」
「東条様。これは失礼いたしました」
男装が板についているのか全く疑われる様子もなく、スムーズに会場内へと通される。
上を向けば、天井から吊るされた豪華なシャンデリアに目を奪われる。下を向けば、非日常感のあるペルシャ絨毯が一面に広がり、その上には艶やかなテーブルカバーに包まれた円卓が規則正しく並ぶ。
そんなどこもかしこも華やか空間に相応しく、フォーマルな衣装を身に纏った権威ある大物たちが、見渡す限りに集まっていた。大企業のトップから大学病院の病院長に、大御所政治家まで。自分が生きてきた世界とはまるで違う光景に思わず圧倒されそうになる。
その側から東条について話す女性たちのヒソヒソ声が聞こえてきて、私はただちに全神経を聴覚に集中させる。
「明日の20時からね、いの谷でパパと東条さんが会食のお約束をしているの。そこで私を婚約者として勧めてくださるんですって」
「あら、それはおめでたいわ。でも東条さんって、一度あなたとのことを否定なさっていなかったかしら?」
「心配なさらないで。次は記者も送って、しっかりと証拠のある記事を書いてもらいますから」
彼が熱愛を表立って否定したのは一人しかいない。間違いなく彼女こそ北里コーポレーションのご令嬢だ。社長の一人娘として大切に大切に育てられ、人前に出てくることも一切なかったのに。突然大勢の前に姿を現したかと思えば、こんな魂胆があったのか。
「その前に、私のことを覚えてもらいたくてね。今日はパパにお願いして連れてきてもらったの」
「でも競争率の高い彼に覚えてもらうのは、かなり難しいんじゃありません?」
「まあ、あなた方はそこで見ていてください」
髪には何段にもカールをかけ、真っ赤なワンピースドレスの切り込みからのぞく、長く伸びた足は誰よりも高いヒールでさらに強調されている。 絢爛なこの会場の中でも、間違いなく抜きん出た存在感だ。
そんな彼女が一点を見つめ、歩き出した。その視線の先には、白いワイシャツに黒のスーツという、何度も見てきた装いがある。並々と注がれたワイングラスは不自然に傾いていて、その腕を今にも振り下ろそうとしているのが一目で分かった。
咄嗟に走って社長の前に立ちはだかると、グラスの中の液体はすべて消えていて、その代償として私の身体がぐっしょりと濡れていた。
「おい、どうなってる?」
「東条くん?東条くん?」
彼の名を何度も呼ぶ声が聞こえる。このまま大きな騒ぎになっては、また要らぬ接点が生まれてしまう。それこそ彼女の思う壺だ。
「私のことは良いですから。社長はそのまま続けてください」
そう耳打ちをして、平然と出口に向かう。すると周りもこの一瞬がまるでなかったかのように、各々の世界へと戻っていく。
時刻は夜の19時。私は社長の指示どおり、男性としてパーティーの受付を進める。
「どなたかの護衛の方ですか?」
「東条グループです」
「東条様。これは失礼いたしました」
男装が板についているのか全く疑われる様子もなく、スムーズに会場内へと通される。
上を向けば、天井から吊るされた豪華なシャンデリアに目を奪われる。下を向けば、非日常感のあるペルシャ絨毯が一面に広がり、その上には艶やかなテーブルカバーに包まれた円卓が規則正しく並ぶ。
そんなどこもかしこも華やか空間に相応しく、フォーマルな衣装を身に纏った権威ある大物たちが、見渡す限りに集まっていた。大企業のトップから大学病院の病院長に、大御所政治家まで。自分が生きてきた世界とはまるで違う光景に思わず圧倒されそうになる。
その側から東条について話す女性たちのヒソヒソ声が聞こえてきて、私はただちに全神経を聴覚に集中させる。
「明日の20時からね、いの谷でパパと東条さんが会食のお約束をしているの。そこで私を婚約者として勧めてくださるんですって」
「あら、それはおめでたいわ。でも東条さんって、一度あなたとのことを否定なさっていなかったかしら?」
「心配なさらないで。次は記者も送って、しっかりと証拠のある記事を書いてもらいますから」
彼が熱愛を表立って否定したのは一人しかいない。間違いなく彼女こそ北里コーポレーションのご令嬢だ。社長の一人娘として大切に大切に育てられ、人前に出てくることも一切なかったのに。突然大勢の前に姿を現したかと思えば、こんな魂胆があったのか。
「その前に、私のことを覚えてもらいたくてね。今日はパパにお願いして連れてきてもらったの」
「でも競争率の高い彼に覚えてもらうのは、かなり難しいんじゃありません?」
「まあ、あなた方はそこで見ていてください」
髪には何段にもカールをかけ、真っ赤なワンピースドレスの切り込みからのぞく、長く伸びた足は誰よりも高いヒールでさらに強調されている。 絢爛なこの会場の中でも、間違いなく抜きん出た存在感だ。
そんな彼女が一点を見つめ、歩き出した。その視線の先には、白いワイシャツに黒のスーツという、何度も見てきた装いがある。並々と注がれたワイングラスは不自然に傾いていて、その腕を今にも振り下ろそうとしているのが一目で分かった。
咄嗟に走って社長の前に立ちはだかると、グラスの中の液体はすべて消えていて、その代償として私の身体がぐっしょりと濡れていた。
「おい、どうなってる?」
「東条くん?東条くん?」
彼の名を何度も呼ぶ声が聞こえる。このまま大きな騒ぎになっては、また要らぬ接点が生まれてしまう。それこそ彼女の思う壺だ。
「私のことは良いですから。社長はそのまま続けてください」
そう耳打ちをして、平然と出口に向かう。すると周りもこの一瞬がまるでなかったかのように、各々の世界へと戻っていく。